脂肪含量の高い製造副産物の給与による肉用育成雌牛からのメタン産生抑制

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要約

給与飼料中に脂肪含有率の高いビール粕、トウフ粕あるいは生米ヌカを適正に用いることにより、育成期の黒毛和種雌牛からのメタン産生を抑制することができる。

  • キーワード:動物栄養、肉用牛、脂肪質飼料、生米ヌカ、ビール粕、メタン
  • 担当:畜産草地研・家畜生理栄養部・反すう家畜代謝研究室、家畜生産管理部・飼料評価研究室
  • 連絡先:0298-38-8655
  • 区分:畜産草地
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

メタンは地球温暖化ガスのひとつであり、地球温暖化防止の観点からも反すう家畜からのメタン産生の抑制が求められている。しかし、わが国での肉用牛では乳牛に比較してメタン産生の抑制手法に関する知見が乏しいのが現状である。また、飼料自給率の向上や飼料費低減を図るためにも製造副産物の活用が求められている。そこで、製造副産物を用いてコスト面にも配慮した畜産農家に導入可能なメタン産生低減飼養技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 繁殖雌牛を想定して、濃厚飼料の一部を飼料中15%となるようにトウフ粕、ビール粕および生米ヌカで置き換えた飼料を日本在来種去勢ヤギ4頭に維持量給与してメタン産生量を測定した。製造副産物の添加により供試飼料の有機物(OM)、粗タンパク質および中性デタージェント繊維(NDF)の消化率が高まった。可消化有機物摂取1kg当りのメタン産生量は無添加に比べ、製造副産物の添加により有意に減少した(表1)。
  • 濃厚飼料の一部を飼料中12%となるようにビール粕あるいは生米ヌカで置き換えた飼料を育成期の黒毛和種雌牛4頭に維持要求量の約1.5倍量に相当する量を給与した。供試飼料のOMおよびNDF消化率は対照区>ビール粕添加区>生米ヌカ添加区の順であった。また、可消化有機物摂取1kg当りのメタン産生量は無添加区、ビール粕添加区、生米ヌカ添加区の順に62.2L、57.0L、53.7Lで、無添加に比べてビール粕添加区は8%、生米ヌカ添加区は14%低い値を示した(表2)。
  • メタン産生に関し製造副産物添加による抑制効果は明らかであり、その種類により抑制効果は異なる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 肉用育成雌牛からのメタン抑制を図る方法のひとつとして、脂肪含量の高い製造副産物を用いることができる。
  • 生産レベルにより、製造副産物の添加による消化率やメタン抑制への影響が認められることから、今後、さらに生産レベル毎のメタン抑制法の検討が必要である。
  • 製造副産物の飼料成分は変動が大きいために、飼料分析センターなどを利用して適切な飼料設計を行う必要がある。

具体的データ

表1 供試飼料のヤギによる消化率とメタン産生量

 

表2. 供試飼料の育成雌牛による消化率とメタン産生量

その他

  • 研究課題名:脂肪質飼料給与による雌牛からのメタン発生の抑制
  • 予算区分:行政対応特研(メタン産生抑制)
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:永西 修、寺田文典、田鎖直澄、竹中洋一、川島知之
  • 発表論文等:1)永西ら(2000)日本畜産学会第97回講演要旨:150
                       2)永西ら(2001)日本畜産学会第98回講演要旨:66