C1化学変換によるソルガムを原料としたメタノール生産
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要約
C1化学変換技術(ガス化合成法)を用いれば、ソルガムは、品種、部位にかかわらず、乾物重の44~49%の重量のメタノールを生産できる。極晩生ソルガム品種を多肥条件下で栽培すれば、5ヶ月間に12.8t/haのメタノール生産が可能となる。
- キーワード:育種、ソルガム、遺伝資源、環境保全、資源利用、バイオマス
- 担当:畜産草地研・飼料作物開発部・育種資源研究室
- 連絡先:0298-37-7552
- 区分:畜産草地
- 分類:行政・参考
背景・ねらい
大気中の二酸化炭素濃度上昇を抑制するためには、エネルギー源を化石燃料からバイオマス燃料に転換することが一つの方法である。近年、あらゆるバイオマスをガス化合成法(C1化学変換)によってメタノールに変換する技術が開発された。この技術を用いてわが国全体でどれくらいのメタノールが生産可能であるかを推定することは、エネルギー施策においても重要となる。そこで、バイオマス生産量が高いソルガム等の暖地型イネ科牧草品種の中から、堆肥を有効利用した多肥栽培条件下での栽培に適する草種と品種を選定し、本技術によるバイオメタノール生産量を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 形態の異なるソルガム2品種の元素含量に差はなく、炭素含量が約46%であった。これは杉木粉より低く、イネ籾殻より高い。また、穂と茎葉部の元素含量も大差なく、硫黄や塩素含量が化石燃料よりも低いクリーンな原料である(表1)。
- 燃焼試験によって測定した発熱量は供試2品種で差がなく、約4,200kcal/kg弱であり、杉木粉より低く、イネ籾殻より高い(表2)。ガス化による生成ガス組成は、発熱量の高い杉木粉よりもH2とCOの割合が低く、CO2割合が高い(表2)。メタノール収率は約44~49%で、1トンの乾燥原料から440kg以上のメタノールが製造できると推定され、穂部(でんぷん)と茎葉部(繊維分)とのメタノール収率の差も小さい(表2)。また、原料からメタノールに移行したエネルギー収率は炭水化物の構造にかかわらず約57%である。
- 関東北部での多肥栽培において、極晩生の「SS901」や「天高」の乾物収量は25 t/ha以上になる(表3)。一方、収穫や乾燥処理の面からは、稈径の細い「SS901」が有利であると考えられる。また、メタノール収率を48%と仮定すると、2000年に栽培した「SS901」の場合の1ヶ月あたりのメタノール生産量(在圃約5ヶ月)は2.56 t/haと推定され、ハワイにおける年間乾物収量67 t/haのサトウキビ栽培の場合に推定される、エタノール発酵による燃料生産効率(エタノール1.23 t/ha:発熱量によるメタノール換算値1.59 t/ha)を大きく上回る。
成果の活用面・留意点
- 本結果は、実際に夏季にソルガムを用いてメタノール生産システムを構築することを想定した場合の関東北部における基礎データとなる。
- 作業体系によって投入エネルギー量が異なることが予想されるが、今後、播種から収穫、乾燥、粉砕作業に必要なエネルギー量を算出して、生産効率を評価する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:C1化学変換のための超多収牧草利用条件の解明
- 予算区分:エコシステム
- 研究期間:2000~2005年度
- 研究担当者:中川 仁、小林 真、蝦名真澄、荒谷 博
- 発表論文等:1)Nakagawa et al. (2000) Proceedings of 4th Int. Conf. on EcoBalance.405-408.
2)中川 仁(2000)農業および園芸76:3-10;257-260.