高度経済成長期以降のわが国における野草地変遷
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要約
植生メッシュデータを用い、1970年代半ばから1990年代半ばまでの野草地の変遷を植生タイプ別に解析すると、1970年代後半における植林と農用地開発が、野草地面積減少の主因であることがわかる。
- キーワード:野草地、変遷、植生、メッシュデータ、生態、野草類
- 担当:畜産草地研・草地生態部・草地資源評価研究室
- 連絡先:0287-37-7246
- 区分:畜産草地
- 分類:行政・参考
背景・ねらい
かつて農村における重要な飼肥料資源であり、農村地域の生物相や物理環境の保全に重要な役割を果たしてきたと野草地の面積は、年々減少し続けている。一方、安全な畜産物の低コスト生産、中山間地域の環境や生物多様性の保全等への社会的な要請が増加して野草地の価値が見直されつつある。
現存する野草地を適正かつ有効に利用すると同時に、保全してゆくためには、その変遷過程(要因)を明らかにすることが不可欠である。そこで、環境省が公表ている4つの時期の植生メッシュデータを用い、野草地変遷を植生タイプ別に全国レベルで明らかにする。
成果の内容・特徴
- 今まで全国レベルでの野草地減少については、土地利用区分「荒れ地」として一括されていたが、本成果により、野草地の変遷が植生タイプ別に示された。
- 高度経済成長期以降におけるわが国における野草地は、1970年代後半に農用地開発や植林、植生遷移などによって極めて多くの面積が消失すると同時に、森林伐採や耕作放棄によって大面積の野草地が新たに生じるなど、大きく変化している(図1)。
- 現在の暖温帯におけるシバ草原は、全て1970年代半ばから1980年代前半にかけて他の植生から変化したものである(図2)。
- 現存するササ草原(2,295メッシュ)の約半分(1,023メッシュ)は1970年代以前からのものである一方、農用地開発(主に草地開発;892メッシュ)や植生遷移などによって森林に変化した(815メッシュ)ものも極めて大面積にのぼる。
- 冷温帯域では、1980年以降も植林によるススキ草原、シバ草原が減少し続ける(表)。
成果の活用面・留意点
- 野草地資源の畜産的有効利用と、里地里山の植生保全等、農村環境行政への活用。
- 3次メッシュ(約1km×1km)レベルでの解析であるため、小規模な野草地は本解析の対象外である。また、1970年代以降のデータに基づく解析結果であるため、それ以前の変遷については、既存の土地利用変遷解析結果を参照する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:明治大正期以降の野草地の土地利用変遷
- 予算区分:交付金(草地動態)
- 研究期間:1998~2001年度
- 研究担当者:小路 敦、神山和則、佐々木寛幸