ルーメン細菌の増殖に対するアミノ酸の効果

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要約

アミノ態窒素の給与によるルーメン混合細菌の増殖促進効果には、少なくともグルタミン酸、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンの存在が必要となる。また過剰なシステイン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニンおよびトレオニンの添加は細菌の増殖を阻害する。

  • キーワード:家畜生理・栄養、乳牛、ルーメン細菌、アミノ酸、増殖促進・阻害
  • 担当:畜産草地研・家畜生理栄養部・消化管微生物研究室
  • 連絡先:電話029-838-8660、電子メールkajikawa@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・普及

背景・ねらい

ルーメン内の微生物は、宿主である反芻家畜にとって重要な蛋白源となることから、家畜の生産性を高めるためには、いかにしてルーメン微生物の合成量を増やすかという問題に取り組む必要がある。ルーメン内微生物の多くはアンモニア等の非蛋白窒素の利用も可能であるが、アミノ態窒素の存在によってその増殖が高まることが知られている。しかしどのアミノ酸が有効かといった点に関しては、明確になっていないことから、ルーメン細菌の増殖に及ぼす個々のアミノ酸の効果を検討する。

成果の内容・特徴

  • ルーメン混合細菌の培養系に20種類のアミノ酸を添加した時には、アンモニアのみ添加の場合と較べて増殖速度が約45%高まるが、個々のアミノ酸ではグルタミン酸またはグルタミンを添加した時にのみ、10%程度の促進効果が見られる(図1A)。
  • システイン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニンおよびトレオニンは、ルーメン混合細菌増殖を阻害する(図1A)。このうちシステインとロイシンの阻害効果は10mgN/L以上で示されるが、イソロイシン、フェニルアラニンおよびトレオニンは1mgN/L濃度でも阻害効果が見られる。
  • 20種類のアミノ酸からグルタミン酸、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、またはバリンのどれか一つを除外すると、アミノ態窒素が示すルーメン混合細菌の増殖促進効果が抑制されることから、これらは増殖促進に必須なアミノ酸と考えられる(図1B)。
  • ルーメン混合細菌の増殖促進に最適なアミノ酸の組合せは、上述した必須の7つのアミノ酸にシステイン、グリシンおよびヒスチジンを加えた場合であり、20種類のアミノ酸混合物が示す増殖促進の約75%の効果が得られる。

成果の活用面・留意点

  • アミノ態窒素の給与によってルーメン微生物の増殖が改善され、代謝蛋白質供給の増大につながることが期待されるが、その場合、特定のアミノ酸の給与ではなく、多くのアミノ酸を組み合わせてバランスをとることが必要となる。
  • またその際には、過剰な阻害アミノ酸の給与や増殖に必須なアミノ酸の欠乏が起こらないように考慮する必要がある。

具体的データ

図1.ルーメン細菌の増殖に及ぼす個々のアミノ酸の A) 添加効果、および B) 不在効果(20種類 のアミノ酸から表記のもののみを除いて添加)。

その他

  • 研究課題名:ルーメン細菌におけるエネルギー代謝とその影響要因に関する研究
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001~2005年度
  • 研究担当者:梶川博、三森真琴、大桃定洋
  • 発表論文等:Kajikawa, et al. (2002) J. Dairy Sci. 85:2015-2022.