肥育豚へのカテキンあるいはビタミンE給与による豚肉の酸化防止

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要約

肥育豚にカテキンあるいはビタミンEを給与すると、通常の豚肉に比べて冷蔵保存中の脂質と筋線維の構造を中等度あるいは高度に安定化して、豚肉の酸化を防止する効果がある。

  • キーワード:肥育豚、豚肉、カテキン給与、ビタミンE給与、脂質酸化、筋線維構造
  • 担当:畜産草地研・品質開発部・畜産物品質評価研究室
  • 連絡先:電話029-838-8690、電子メールmmitsuru@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

植物性の色素であるカロテノイドとフラボノイドは抗酸化作用をもつものが多い。フラボノイドの中でも特にカテキンは高い抗酸化性を有することが知られている。
そこで、カテキンを肥育豚に給与して、冷蔵保存中の豚肉の酸化防止に及ぼす効果を対照およびビタミンE給与と比較することにより検討する 。

成果の内容・特徴

  • 交雑種の肥育豚を用い、肥育用配合飼料を給与する対照区、2000mgカテキン類/頭を給与するカテキン給与区、2000mg酢酸dl-α-トコフェロール/頭を給与するビタミンE給与区に分けて、と畜前8週間毎日給与する。
  • と畜後、筋肉より厚さ1cmのステーキ肉のサンプルを作成し、酸素透過性のフィルムで覆い、照明下5°Cで展示する。
  • 展示後10日間のドリップ、肉色、メトミオグロビン割合、脂質酸化(TBARS)の変化を測定する。また、展示したサンプルからパラフィン切片を作成して、染色を行い、光学顕微鏡で横断像を観察し、崩壊した筋線維の割合を求める。
  • カテキン給与は対照に比べ展示10日後の脂質酸化を抑制し、ビタミンE給与は対照に比べ展示7日以降の脂質酸化を抑制する(図1)。カテキンあるいはビタミンE給与は展示期間中のドリップ、肉色、メトミオグロビン割合には影響を及ぼさない。カテキンあるいはビタミンE給与は対照に比べ筋線維の崩壊を少なくする(図2、3)。

成果の活用面・留意点

  • 肥育後期の豚にカテキンあるいはビタミンEを給与しておくと、通常の豚肉に比べて流通、販売、消費段階での酸化防止が図られる。
  • 今回用いたカテキンあるいはビタミンEの給与量(2000mg/日・頭)は、増体や枝肉性状に影響を及ぼさない。
  • 生体および食肉におけるカテキンの抗酸化機構を明らかにする必要がある。

具体的データ

図1.豚肉の脂質酸化(TBARS)に及ぼすカテキンあるいはビタミンE給与と展示日数の影響

 

図2.豚肉の筋線維の崩壊割合に及ぼすカテキンあるいはビタミンE給与の影響

 

図3.10日間展示後ヘマトキシリン・エオジン染色した豚の胸最長筋の横断面

その他

  • 研究課題名:植物性抗酸化成分の給与による食肉の品質改善技術の開発
  • 予算区分:21世紀6系
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:三津本 充、佐々木啓介、佐々木浩一(秋田県畜試)、坂下邦仁(鹿児島県畜試)、
                      本間紀之(新潟県畜研セ)、久保正法(動衛研).