牛における濃厚飼料および稲発酵粗飼料中のリンの第一胃内消失率
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要約
各種濃厚飼料中の全リンおよびフィチン態リンの牛における第一胃内消失率は87%および90%である。また、飼料用イネでは、モミに全リンが0.23%、茎葉中に非フィチン態リンのみが0.09%含まれ、ホールクロップサイレージ中の全リンの第一胃内消失率は51%である。
- キーワード:牛、稲発酵粗飼料、濃厚飼料、リン、フィチン態、飼育管理
- 担当:畜産草地研・家畜生産管理部・乳牛飼養研究室
- 連絡先:電話0287-37-7806、電子メールnishtake@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
当研究室では、リンを泌乳牛に要求量以上給与するとそのほとんどが糞中へ排泄され、体内へのリン蓄積量が増加しないことを明らかにしている。また、濃厚飼料中には、リンの60~82%がフィチン態の形で存在しているが、近年、反芻家畜においても第一胃内で分解されないフィチン態リンがあることが確認されている。リンは環境汚染物質のひとつであることから、牛からのリン排泄量の低減を図るためには、飼料中における牛が利用可能なリンの含量を明らかにする必要がある。そこで、各種濃厚飼料および稲発酵粗飼料(イネホールクロップサイレージ)中のリン含量とその第一胃内消失率を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 濃厚飼料中のフィチン態リンのナイロンバッグ法による第一胃消失率は、全リンの消失率と同じかやや高い (表1)。
- 各種濃厚飼料中の第一胃で分解されるフィチン態リンの割合は約90%(73.2~98.8%)である(表1)。
- 飼料用イネ(はまさり、完熟期、サイレージ調製前)のリン含量は、モミ中で0.23%および茎葉中で0.09%である(表2)。モミのリンの78.3%はフィチン態リンである(表2)。茎葉にはフィチン態リンが含まれず、イネ全体のフィチン態リンの含量は44.5%である(表2)。
- イネホールクロップサイレージ中の全リンの第一胃内消失率は50.7%である(表3)。
成果の活用面・留意点
- 生産現場でイネホールクロップサイレージを主体とした飼料設計を指導する際に、牛からのリン排泄量低減を図るための参考となる。
- リンの主要な吸収部位は小腸上部であるが、第一胃以降第四胃までのフィチン態リン分解性は考慮していない。
- 本研究で求めたリンおよびフィチン態リンの消失率は、第一胃からの内容物流出速度を5%/時(維持の2倍量の飼料を給与した場合を想定)としているため、高泌乳牛の場合は本データよりも消失率が低くなる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:乳牛での飼料用イネホールクロップサイレージおよび濃厚飼料の有効リンの解明
- 予算区分:特別研究員
- 研究期間:2000~2003年度
- 研究担当者:朴雄烈、石田元彦、西田武弘、細田謙次、エルデンバヤル