無窓鶏舎内の浮遊細菌濃度と粉塵濃度の動態

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要約

無窓鶏舎内において空中浮遊細菌濃度と空気力学径1~5μmの粉塵濃度には高い相関があり、測定が容易な粉塵濃度を指標にして空中浮遊細菌濃度の動態を把握することが可能である。これらは点灯・消灯や給飼などの飼養管理の作業と関連して変動する。

  • キーワード:畜産環境、鶏舎、細菌、粉塵、衛生環境
  • 担当:畜産草地研・家畜生産管理部・家畜管理工学研究室
  • 連絡先:電話029-838-8678、電子メールikeguchi@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

空中浮遊細菌は粉塵に付着していることが一般的に言われており、畜舎内で発生する臭気や細菌等が付着した粉塵は、畜体の疾病、作業者の呼吸器系の疾病の原因とされ、これが舎外へ拡散することにより悪臭等の環境問題をも生じさせている。しかし、無窓鶏舎内の空中浮遊細菌濃度(舎内空気1m3あたりの一般細菌の生菌数)の測定事例、特に時系列の測定はなく、粉塵との相関も定量的な把握がなされていない。
そこで、舎内衛生環境要因である空中浮遊細菌の制御、モニタリング法の開発に資するため、無窓鶏舎を対象に空中浮遊細菌濃度と粉塵濃度の相関とその動態を把握する。

成果の内容・特徴

  • 商用鶏舎(12(幅)×74(長さ)×4.8(天井高)m、6段ケージ4列、収容17400羽、89週令)と実験鶏舎(9.5(幅)×11(奥行き)×2.8(天井高さ)m、収容鶏230羽、29週令)において時系列で空中浮遊細菌濃度と粉塵濃度の測定を実施した結果、商用鶏舎と実験鶏舎の空中浮遊細菌濃度は平均1.25×104 と1.00×103 CFU m-3であり、空気力学径が1~5μmの粉塵濃度は、商用鶏舎で平均3.91×106 個 m-3、実験鶏舎で平均1.96×106 個 m-3であった(表1)。
  • 重力の影響を受けにくく、気流で運ばれる空気力学径5μm以下の粉塵(パッシブスカラー)のうち、空気力学径1~5μmの粉塵濃度と空中浮遊細菌濃度との間に両鶏舎とも高い相関関係が認められる(図1)。
  • 空気力学径が1~5μmの粉塵濃度と空中浮遊細菌濃度の実験鶏舎における時系列変化を見ると、点灯・消灯時刻や給餌時刻等に粉塵濃度の上昇、消灯後には粉塵・細菌の各濃度の低下がみられ、粉塵濃度と空中浮遊細菌濃度の動態はほぼ一致する(図2)。
  • 以上により、鶏舎内の空中浮遊細菌濃度の動態は空気力学径1~5μmの粉塵濃度を測定することによって推定できる。

成果の活用面・留意点

  • 粉塵計測による細菌濃度モニタリング法開発や、無窓鶏舎における粉塵・空中浮遊細菌の効果的抑制法検討のための基礎資料として活用できる。
  • 空気力学径が1μm 未満の粉塵や5μm より大きい粉塵の場合は、空中浮遊細菌濃度との相関は見られない。

具体的データ

表1 平均粉塵濃度と空中浮遊細菌濃度

 

図1 空中浮遊細菌濃度と粉塵濃度の関係

 

図2 実験鶏舎における粉塵濃度と空中浮遊細菌濃度の時系列変化

その他

  • 研究課題名:無窓採卵鶏舎における空気衛生環境を提供する換気構造と制御技術
  • 予算区分:サルモネラ
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:池口厚男、市来秀之、長谷川三喜、本田善文