イタリアンライグラスの葉色診断に基づく収量判定と部分追肥効果

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

イタリアンライグラスの収穫時乾物収量は4月上旬追肥前の生育スコア(葉身の葉緑素計の読みSPAD値と草丈の積値)と正の相関関係がある。生育スコアの低い(カラー写真の緑度の薄い)ところに部分追肥を行うことにより、全面追肥と同等の収量を得ることができ、また窒素追肥量を大幅に削減できる。

  • キーワード:イタリアンライグラス、葉色診断、収量、部分追肥、土壌肥料
  • 担当:畜産草地研・飼料生産管理部・作物栄養研究室、家畜生産管理部・資源循環研究チーム、
            飼料生産管理部・栽培生理研究室・栽培工学研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7559、電子メールthtnk@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

最近の飼料作物圃場では、ふん尿の多量施用による飼料の品質低下や環境負荷の増大が懸念されている。肥料成分の過剰施用を回避しつつ高品質の自給飼料を生産するためには、圃場内で生育状況に対応した施肥管理を行い、生育ムラを改善することが必要である。収量および品質の均一化と施肥による環境への負荷軽減を図るためには、作物の生育状況に応じた管理を行うことが求められる。そこで、イタリアンライグラスの葉色診断に基づく収量推定法と生育不良地点のみ追肥する部分追肥の効果について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • イタリアンライグラスの収穫時乾物収量は、葉身のSPAD値(葉緑素計の読み)より生育スコア(SPAD値に草丈の測定値を乗じた値)との方が相関係数が高く(図1)、生育スコアは収穫時乾物収量の推定指標として有効である。
  • 4月上旬にラジコンヘリで撮影した圃場全体のカラー写真を地理情報解析ソフトで解析して緑度分布図を作成した。カラー写真の緑度はSPAD値、生育スコアおよび収穫時乾物収量を反映するため(表1)、カラー写真の緑度から追肥の必要な部分の特定が可能である(図2)。
  • カラー写真の緑度分布図に基づいて、緑度の薄い(生育スコアがほぼ7以下と低い)ところに窒素を部分追肥することにより、全面追肥と同等の収量を得ることができ、また窒素追肥量を大幅(60%程度)に削減できる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • イタリアンライグラスの効率的な施肥管理に活用できる。土壌養分のバラツキの大きい圃場で、しかも肥料分の不足が生育ムラの主要因となる条件で適用できる。
  • 窒素追肥に尿素を用い、可変式施肥機にて追肥した北関東地域での試験結果であり、また窒素追肥の削減率は圃場条件によって異なることに留意する。

具体的データ

図1.春先、追肥前イタリアンライグ ラスの生育スコアと収穫時乾物収量の関係

図2 春先、追肥前イタリアンライグラス 圃場(1.5ha)の緑度分布

 

表1 カラー写真(4月上旬に撮影)におけるイタリアンライグラスの緑度と生育スコアおよび収穫時乾物収量との関係

 

表2 窒素追肥がイタリアンライグラス収量と圃場内での変動に及ぼす影響

 

その他

  • 研究課題名:大区画圃場における飼料作物の不均一性診断技術の開発(1)(2)
  • 予算区分:軽労化農業
  • 研究期間:2000~2002年度
  • 研究担当者:畠中哲哉、須永義人、原田久富美、川地太兵、河本英憲、張建国、青木康浩、加茂幹男、
                      吉村義則、黒川俊二、澤村篤、住田憲俊、石田三佳