油圧ショベルを用いたロールベールの把持、運搬システム

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要約

油圧ショベルをベースとした自走自載式ロールベール運搬システムで、自載はショベル後方に運搬車をけん引することにより、一人で圃場外へ飼料イネロールベールを搬出できる。水田の軟弱地や高い畦畔に有効で、さらにショベルとしての利用もできる。

  • キーワード:農業機械、水田飼料作、飼料イネ、ロールベール、運搬車、グリッパ
  • 担当:畜産草地研・飼料生産管理部・栽培工学研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7801、電子メールsawa@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

飼料イネの収穫作業の大部分は飼料作用の作業機が用いられているが、時には土壌条件が軟弱なこと、作業道と圃場との高低差が大きいことがあり、車輪式トラクタでの作業が困難な場面が生じる。特に、搬出のために繰り返し走行する圃場端ではぬかるみ易く、搬出が困難な場面もみられる。このような問題に対して、車輪式トラクタ前面に取り付けた従来のグリッパ方式ではなく、クローラ走行部を持つ油圧ショベルを用いた新たなロールベールの把持・運搬システムを構築することをねらいとする。

成果の内容・特徴

  • 装置は、油圧ショベルのバケット部分の代わりに、トラクタ用のベールグリッパを取り付けたものである(図1)。取り付けには、取り付け治具の製作、把持のための油圧系統の追加ならびに把持力の調整のために油圧流量の絞り調整が必要である。
  • ベースの油圧ショベルの機関出力は40.5kW(55PS)で、ベールグリッパは直径150cmまでのロールに対応できる。グリッパの位置決めはショベルの動作と同様に左右のレバーにより行い、グリッパの開閉は足下の操作ペダルで行う。
  • ロールの把持は、油圧ショベルを大凡の位置に近づけて、機体上部の回転、アームの収縮により容易に可能であり、ブームの範囲に運搬車が近づけば機体上部の回転で移動することなく積載可能である。
  • 油圧ショベルによるロールの最大持ち上げ高さは5.9m、本機の先端からの水平到達距離は3.5mと、広い作業可能範囲をもつ。
  • 3個のロール積載のモデル試験では、4分弱の時間を要し、従来のトラクタに比べて30秒程度時間がかかったが、運搬車をけん引しながら、その運搬車に自載できるなどのトラクタにない機能を有している(表1,図2)。
  • 30a圃場内に散らばったロールの運搬車伴走方式による圃場外搬出モデル試験では、油圧ショベル15分18秒、トラクタ11分33秒の時間を要し、油圧ショベルの方は4分程度時間がかかる。また、運搬車をけん引しながら自載し、圃場外へのロールの搬出作業は約24分かかる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 軟弱な圃場条件や農道と圃場との高低差のある場合には有効に利用できる。また、油圧ショベルは他にもトラクタにない多くの機能を有しているので、油圧ショベルの利用が促進される。
  • 標準的な油圧ショベルでは、油圧回路を一系統増設しなければならない。また、移動速度が遅いことなどから遠距離の移動には向かないので、飼料イネ栽培が団地化された場所での利用に向いている。

具体的データ

図1 油圧ショベル先端に付 けたベールグリッパ

図2 運搬車けん引:自載運 搬の様子

 

表1 油圧ショベルのハンドリング性能

表2 油圧ショベルの作業性能(30a 圃場)

その他

  • 研究課題名:飼料イネ収穫・搬送システムの開発
  • 予算区分:21世紀3系
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:澤村篤、住田憲俊、石田三佳