山羊(シバヤギ)の放牧でチカラシバを退治する

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要約

出穂後は牛に採食されないチカラシバが蔓延し、牧草が衰退して生産力が低下し、かつ、景観も悪化した放牧草地に、飼養が容易で景観的にも優れ、いろいろな草木を採食するシバヤギ(30頭/ha)を4月上旬から10月下旬まで定置放牧すると、チカラシバを退治し、シバの生育を促すことができる。

  • キーワード:永年草地、放牧、シバヤギ、チカラシバ、シバ、植生改善、景観改善
  • 担当:畜産草地研・草地生態部・上席研究官
  • 連絡先:電話0287-37-7228、電子メールharold@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

内外諸情勢の変化により、多くの公共牧場において放牧利用が減退する中で、旺盛な種子繁殖力を持ち、叢生して牧草を被陰し生長を阻害するチカラシバが蔓延している。飼養が容易でふれあい機能や景観改善機能の効果ももつ山羊を用いたチカラシバの生物的防除法を確立する。

成果の内容・特徴

  • 平均個体重約35kgのシバヤギ3頭/10a(強放牧区)を、4月上旬から10月下旬まで定置放牧することで、チカラシバの被度、草丈は2年目から顕著に減少し、それぞれ3%、30cm以下になる。2頭/10a(弱放牧区)では、チカラシバの被度、草丈とも抑制で きず、秋には出穂し、種子供給が続く(図1左半)。
  • 4年目から両区を開放し放牧圧を2.5頭/10aとした場合、前強放牧区の被度は低いまま維持され、前弱放牧区の被度も徐々に低下するが前強放牧区には到らない。両処理区の草丈は、差が無くなる(図1右半)。
  • 植物構成比率(重量比)においても強放牧区のチカラシバの比率の低下は著しく、4年目以降も低いまま維持される(図2)。弱放牧区では高いままであり、4年目以降もその減少速度は緩く、6年目夏になお30%弱を示す(図3)。
  • 年次の経過とともに既存のシバが拡散し、その構成比は強、弱放牧区とも徐々に増加し、6年目には約30%を占める(図2、3)。
  • チカラシバの減少と草地の短草化に伴い、初年度には300~450kg/10aあった現存量は、6年目に80~100kg/10a以下となる。生産量も当初の6kg/10a/日から2kg/10a/日と低下するが、山羊の生育は順調であった(表1)。
  • 6年目には短く、不稔実粒が多いとはいえ、前強放牧区でもチカラシバの出穂が見られた。したがって、チカラシバ抑圧効果が早く得られ、長く維持するためにも、草生産量を考慮しながら限りなく強放牧区(3頭/10a、総体重100kg前後)に近い放牧圧を維持することが望ましい。

成果の活用面・留意点

  • チカラシバ等草地雑草の生物的防除法として、荒廃草地の植生改善に活用できる。
  • ワルナスビ等不食草は掃除刈りが必要。また、野犬害の懸念されるときは、小屋への収納、電牧ネットの設置など対策をとる。より大型の乳用山羊ザーネン種を利用する場合は、草地を観察しながら放牧圧を調節する。

具体的データ

図1 チカラシバの被度・草丈の変化

 

図2 強放牧区の植物構成比率の変化

 

図3 弱放牧区の植物構成比率の変化

 

表1 山羊の放牧および生育状況

その他

  • 研究課題名:チカラシバ侵入荒廃草地の重放牧による植生改善条件の解明2、
                      山羊放牧によるチカラシバの抑圧、山羊によるチカラシバ抑圧のための最適放牧圧の検証
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1997~2001~2002
  • 研究担当者:林 治雄