無施肥下のリードカナリーグラス放牧草地の草量、消化率および家畜生産

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要約

冷温帯におけるリードカナリーグラス放牧草地を無施肥で利用した場合の草量と消化率の季節変化が明らかになり、草地の家畜生産量を最大にする放牧期間は、育成牛3頭/haの場合には5-10月(6ヶ月)、育成牛4-5頭/haの場合には5-9月(5ヶ月)である。

  • キーワード:永年草地・放牧、家畜生産、草地管理、無施肥、リードカナリーグラス
  • 担当:畜産草地研・山地畜産研究部・山地草地研究室
  • 連絡先:電話0267-32-2356、電子メールmasah@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

リードカナリーグラスは、多様な気象条件・管理に耐え、ギシギシ等の雑草の侵入を抑える長所を持つ。近年の品種改良により低栄養価・低嗜好性という欠点も改善され、採草利用としてその栽培面積は増えている。本草種の持つ以上の利点は、山地傾斜地のような管理の行き届かない草地においての放牧利用に有用と考えられる。そこで、強放牧区(3-4頭/0.73ha)と弱放牧区(2-3頭/0.73ha)を作り、両区とも2つ(東・西)のパドックで輪換放牧させて調査を行い、冷温帯における無施肥下のリードカナリーグラス放牧草地の草量、消化率および家畜生産を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 地際5cm以上の草量は6-290gDM/m2の範囲にあり、5月から8月にかけて増加し、その後減少する傾向を示す(図1)。育成牛を3頭/0.73ha以上放牧した場合には、10月以降の草量は著しく低下する。
  • 地際5cm以上の草地植生の乾物消化率は、41-70%の範囲にあり、5月から11月にかけて漸近的に減少する傾向を示し、強放牧区の方が弱放牧区より高い値で推移する(図1)。
  • 放牧期間の日増体量は、頭数少なく放牧開始日の体重が小さい方が高く、家畜生産量は、頭数多く放牧開始日の体重が小さい方が高い(表1)。
  • 1ha当たり育成牛を約3頭放牧する場合には、10月末まで牛は増体する(表1)。
  • 1ha当たり育成牛を4-5頭放牧し、草地の家畜生産量を最大にするには、10月の草量が低下するために、放牧を9月末に終了する必要があり、その場合の草地の家畜生産量は300kg/ha/期間以上、日増体量は0.5kg/頭/日以上が得られる(表1)。

成果の活用面・留意点

  • リードカナリーグラスを放牧利用する場合の基礎データとなる。
  • 1997年8月に造成し(造成時のみ施肥)、1998年には採草利用後放牧を開始した。
  • リードカナリーグラスの割合は、利用3年目の2000年から減り始め、特に2001年の強放牧区では、リードカナリーグラス約50%、ケンタッキーブルーグラスが約47%となっており、植生管理については別途検討が必要である。
  • 冷温帯で、造成時をのぞいて無施肥条件で、低アルカロイド品種(ベンチャー)を用いて放牧利用した場合の結果なので、施肥した場合や旧来の品種(コモンなど)を用いた場合には、結果は異なることが考えられる。

具体的データ

図1. 地際5cm以上の草量と草地植生の乾物消化率の変動.

 

表1.リードカナリーグラス放牧草地の放牧条件と家畜生産

その他

  • 研究課題名:リードカナリーグラス草地における肉用牛の放牧利用
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1996~2002年度
  • 研究担当者:東山雅一、斉藤吉満、下田勝久、坂上清一