ゴールデンハムスターにおいて母性効果は離乳時体重の選抜に利用できる

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要約

ゴールデンハムスターの離乳時体重は母性環境効果を考慮し、その母性遺伝効果にもとづき選抜を行うことが可能である。

  • キーワード:家畜育種、全家畜、離乳時体重、母性遺伝効果、母性環境効果、育種価、選抜
  • 担当:畜産草地研・家畜育種繁殖部・家畜育種研究室
  • 連絡先:電話029-838-8625、電子メールkazishi@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

母性効果は、子にとって雌親が与える環境効果であり、雌親の遺伝的能力である母性遺伝効果と、母性環境効果とに分けられる。繁殖形質や離乳後間もない形質では母性環境効果や母性遺伝効果の影響が大きいことが知られている。これら母性効果が影響をおよぼしている形質では、母性環境効果の影響を取り除くとともに、母性遺伝効果を考慮することで、選抜効率が高まると考えられる。そこで、ゴールデンハムスターを用いて母性効果を考慮した選抜をおこなう。

成果の内容・特徴

  • ゴールデンハムスターの離乳時体重に占める母性環境効果は表型価のおよそ半分の大きさである。また、母性遺伝効果は表型価の約8%を占める。この結果から母性効果を考慮した選抜は可能である(表1)。
  • 母性環境効果を考慮し、母性遺伝効果にもとづく選抜が可能であることが示唆されたため、母性遺伝効果に基づいた離乳時体重の選抜実験をおこなった。世代を経るにつれ、母性遺伝効果で選抜した群は離乳時体重が増加する(図1)。また、直接遺伝効果および母性遺伝効果の推定値も増加する(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 離乳時体重は母性環境効果を考慮するとともに、その母性遺伝効果にもとづき選抜を行うことが可能である。
  • 繁殖形質や、初期発育形質等、母性効果が影響している他の形質についても、母性効果を考慮した選抜が可能である。
  • 家畜においては集団によって、直接的遺伝効果と母性遺伝効果の共分散が負になる場合が報告されており、そのような場合では母性遺伝効果を考慮する必要性がより高くなる。

具体的データ

表1 離乳時体重の遺伝的パラメータの推定値

 

図 1. 各世代における離乳時体重の対 照群(無選抜群)との偏差

図 2. 各世代における離乳時体重の母 性遺伝効果および直接遺伝効果の対照 群からの偏差

その他

  • 研究課題名:ゴールデンハムスターの母性効果を利用した選抜
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1998~2002年度
  • 研究担当者:石井和雄、古川 力、佐々木修、武田尚人
  • 発表論文等:石井ら(2002) 草食実験動物26:57-63.