ウシ核移植において高い体外発生率が得られる細胞融合と活性化の時間

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要約

ウシ線維芽細胞と卵丘細胞を用いた体細胞核移植において、細胞融合を成熟培養開始21時間後、化学的活性化処理をその3時間後に行うと効率的に胚盤胞期胚へ発生する。

  • キーワード:ウシ、繁殖、核移植、成熟培養時間、胚盤胞
  • 担当:畜産草地研・家畜育種繁殖部・生殖細胞研究室
  • 連絡先:電話029-838-7382、電子メールakagi@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

体細胞クローン作出技術は優良家畜の増殖・生産や新産業創出に貢献する技術として期待されている。しかしながら現在までクローン個体の作出効率は低く、効率的かつ安定的なクローン作出技術の確立が求められている。核移植胚の作出のためにはあらかじめ核を除いておいた卵子とドナー細胞との融合および卵子の発生の開始ために人為的な活性化刺激が必要不可欠な過程となっている。ウシ体細胞核移植胚の作出技術の効率化を図るために、本研究では核移植胚の作出に効果的な細胞融合と化学的活性化処理のタイミングを明らかにすることを目的とする。

成果の内容・特徴

  • ドナー細胞と除核未受精卵子との融合はZimmerman mammalian cell fusion medium 中で25 V/150 μm、10 μ secの1回の直流パルスで行う。化学的活性化処理は10 μMカルシウムイオノフォアで5分間、10 μg/mlシクロヘキシミド+2.5 μg/ml サイトカラシンDで1時間、その後10 μg/mlシクロヘキシミドで4時間の培養を行う。
  • 7つの細胞融合と活性化のタイミング(図1)で作出されたウシ線維芽細胞由来核移植胚の体外発生能を比較すると、細胞融合と活性化のタイミングは体外発生能に影響を及ぼし、細胞融合を成熟培養開始後21時間に行い化学的活性化処理を融合後3時間に行うときに有意に高い胚盤胞発生率(63.2%)を得ることができる(図2)。
  • 本法(F21A24区)で作出されたウシ卵丘細胞由来核移植胚を受胚牛に移植すると従来法(F24A24区:受胎率71.4%、産子生産率57.1%)と同等の良好な受胎率(84.6%)と産子生産率(61.5%)が得られる(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 本法により効率的に移植可能胚(胚盤胞期胚)を作出できる。

具体的データ

図1 細胞融合(F)と化学的活性化処理(A)の時間

 

図2 様々な細胞融合と化学的活性化処理のタイミングで 作出したウシ線維芽細胞由来核移植胚の胚盤胞発生率

 

表1 細胞融合のタイミングが卵丘細胞核移植胚の発生能に及ぼす影響

 

その他

  • 研究課題名:体細胞核移植によるクローン牛作出技術の確立
  • 予算区分:体細胞クローン
  • 研究期間:1999~2005年度
  • 研究担当者:赤木悟史、高橋清也、足立憲隆、淵本大一郎、居在家義昭