コレステロール付着作用を有するプロバイオティック乳酸菌
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要約
安全で、乳製品製造に適したラクトコッカス属乳酸菌のなかから、コレステロールを付着する菌株を見出した。菌株のコレステロール付着作用は、死菌体でも認められる。
- キーワード:プロバイオティクス、乳酸菌、コレステロール、細菌、畜産物・品質
- 担当:畜産草地研・品質開発部・微生物利用研究室
- 連絡先:電話029-838-8688、電子メールanne@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
近年の食生活の欧米化に伴い高脂血症の患者数が増えてきている。高脂血症とは、血液中のコレステロール、中性脂肪が増えた状態をさし、動脈硬化の要因であり、また狭心症等の心疾患を引き起こす原因となることが知られている。そこで代表的なプロバイオティクス(宿主の健康維持に有益に働く微生物)である乳酸菌について、コレステロールを付着する乳酸菌の摂取が血清コレステロールレベルに及ぼす効果が注目されている。乳酸菌は20属に分かれているが、このうちラクトコッカス属の乳酸菌は、安全性が高く、乳製品製造のスターターとして用いられている。
そこで本研究では、乳業利用上重要なラクトコッカス(Lactococcus)属乳酸菌のなかから、コレステロール付着作用を有する新規なプロバイオティック乳酸菌を見出すことを目的とする。
成果の内容・特徴
- ラクトコッカス属乳酸菌は、菌株間で差はあるものの、供試株すべてがコレステロールを付着する能力を有しており、なかでもLactococcus lactis subsp. lactis biovar diacetylactis N7株は、最もコレステロール付着能が優れている(表1)。
- N7株のコレステロール付着作用はMRS培地よりもGAM培地で優れており、増殖培地により異なる。また豚において血清コレステロール低下に効果があったと報告されているLactobacillus acidophilus ATCC 43121と同程度のコレステロール付着作用を示す。
- N7株のコレステロール付着作用は死菌体(加熱処理菌体)でも認められる(図1)。死菌体のコレステロール付着能を生菌の場合、すなわち、増殖と共にコレステロールを付着する場合(増殖菌体)と比較すると、生菌の方が死菌体よりもコレステロール付着作用が大きい。
成果の活用面・留意点
- 生体レベルでの効果を確認できれば、コレステロール付着作用を有するN7株を用いた新規プロバイオティック食品の開発が期待できる。
- N7株は死菌体でもコレステロール付着作用を有することから、凍結乾燥粉末として食品に混合するなど、N7株を発酵乳以外の形態で利用することも可能である。
- 乳酸菌のコレステロール付着作用は増殖培地により異なるため、コレステロール付着能を有する乳酸菌を探索する際には、使用する培地の選択に注意が必要である。
具体的データ


その他
- 研究課題名:乳酸菌の胆汁酸耐性機構に関する研究
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2000~2002年度
- 研究担当者:木元広実、岡本隆史
- 発表論文等:1)木元ら(2002)特開2002-65203.
2)Kimoto et al. (2002) J. Dairy Sci. 85:3182-3188.