家畜ふん尿処理由来の揮散物質を測定する入気制御式・気密チャンバーシステム

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要約

家畜ふん尿処理から発生する環境負荷揮散物質の測定手法として、入気制御式・気密チャンバーを採用したシステムは、発生する揮散物質を100%近く回収でき、堆肥化処理等からの環境負荷揮散物質を評価できる。

  • キーワード:入気制御式・気密チャンバー、環境負荷、揮散物質、畜産環境
  • 担当:畜産草地研・畜産環境部・環境浄化研究室、資源化研究室
  • 連絡先:電話029-838-8677、電子メールyasuyuki@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

家畜排泄物処理過程から発生する環境負荷揮散物質(温室効果ガス等)を評価するためには、自然環境条件の影響をみる試験と並行して、環境条件を制御して揮散物質の発生要因を特定していく試験が必要となる。過去に開発した環境負荷揮散物質測定システム(畜産研究成果情報 第13巻)はチャンバーの縁が開放していることからチャンバー内部の条件を任意に変更することは難しく、設定できる試験に限界があった。そこで新たにチャンバー内環境条件の設定が可能な入気制御式・気密チャンバーを用いた揮散物質測定システムを開発した。

成果の内容・特徴

  • 容積約13m3(直径3 m×高さ2.2 m)のPE(ポリエチレン)製チャンバーに入気口(6箇所:チャンバーの側壁下部周辺)を設置し、チャンバーの縁は床面に接着させ、内部を完全に密閉にする(図1)。空気は入気口からチャンバー内に入り、テント頂点部の排気口から排出される。
  • 通気は2基のブロアによって制御することができる。チャンバー周辺空気の混入を防ぐため、内部は陽圧に保たれている。揮散物質は、排気・入気の一部を測定装置(IPD, Infrared Photoacoustic Detector; INNOVA)に導入することによって、濃度を連続的に測定することができる。
  • 標準ガス(アンモニア:NH3、亜酸化窒素:N2O、メタン:CH4)をチャンバー内に放出して揮散物質回収能を検証したところ、全てのガスで99%以上の回収率を示した(表1)。
  • 本システムの測定例として、豚ふん・ワラ混合物の堆肥化を行い、窒素収支をみた。初発時の総窒素量に対して46%が損失し、そのうち約6割がアンモニア揮散によるものであった(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 入気の制御が可能であることから、任意の気体を流し込む事等によって、チャンバー内の環境条件を変更することができる。
  • 排気のためにチャンバー内部を陰圧にする必要がないことから、換気回数が低減でき、微量な揮散物質のモニタリングにも対応できる。
  • 気密性保持のため、維持管理(リークテスト等)を定期的に行う事が望ましい。

具体的データ

図1.入気制御式・気密チャンバーを採用した揮散物質測定システム概略図

 

表1.揮散物質測定システムにおける揮散物質回収能試験

図2.豚ふん堆肥化における窒素化合物の収支

その他

  • 研究課題名:家畜ふん尿由来のトリメチルアミン、アンモニア等悪臭物質の防除技術の開発
  • 予算区分:国際共同研究プロジェクト
  • 研究期間:平成11~13年度
  • 研究担当者:福本泰之、Hans B. Rom(デンマーク農業工学研究部)、Preben Dahl(デンマーク農業工学研究部)、
                      長田 隆、道宗直昭(生研機構)、羽賀清典