Maize dwarf mosaic virusの種子伝染によるトウモロコシモザイク病の発生
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要約
トウモロコシモザイク病の病原であるMaize dwarf mosaic virus(MDMV)は、一部のトウモロコシF1系統で高率に種子伝染する。これらの種子伝染株の発生は、圃場におけるモザイク病の多発要因のひとつとなる。
- キーワード:作物病害、とうもろこし、モザイク病、ウイルス、種子伝染、MDMV
- 担当:畜産草地研・飼料生産管理部・病害制御研究室
- 連絡先:電話0287-37-7556、電子メールswan@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
トウモロコシモザイク病は関東以西の暖地で多発するウイルス病である。その病原ウイルスはサトウキビモザイクウイルス、Maize dwarf mosaic virus (MDMV)、及びキュウリモザイクウイルスで、これらのウイルスに感染した畦畔雑草が伝染源となり、アブラムシ類で媒介されトウモロコシモザイク病が多発すると考えられてきた。しかし、圃場においてトウモロコシF1系統の一部で生育初期から本病が多発したことから、その病原と伝染環について再検討し、本病の蔓延を阻止する対策の策定を目的とした。
成果の内容・特徴
- 生育初期からモザイク病が多発したトウモロコシF1系統「長交C920号」及び「長交C944号」の種子を隔離条件下で播種育成した結果、種子伝染によるモザイク病株が発生し、「長交C920号」では供試発芽種子590粒中10粒が、「長交C944号」では107粒中3粒が発病した(表1)。
- これらの種子伝染株では、第1葉から鮮やかな条斑状のモザイク病徴が進展する(図1)。
- 圃場での発病株率が低かったその他のF1系統・品種では、種子伝染によるモザイク株の発生は認められなかった(表1)。
- 種子伝染株からは電顕観察(DN法)により長さ約800nmのひも状ウイルス粒子が検出され(図2)、DAS-ELISA法によりMDMVと同定した。
- 以上から「長交C920号」及び「長交C944号」におけるモザイク病の多発はMDMVの種子伝染に起因すると考えられる。
- 国内での種子伝染による本病の発生確認はこれが初めてである。
成果の活用面・留意点
- トウモロコシ種子の増殖に際しては健全株からの採種が望ましい。
- 本試験で明らかになった種子伝染株の発生率は1.7~2.8%と極めて高い。これまでの海外での報告ではMDMVの種子伝染率は0.007~0.4%程度であり、本試験で種子伝染が確認されなかったF1系統・品種についても注意が必要である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:飼料作物に発生する新病害等の病原収集と発生実態の解明
- 予算区分:交付金・ジーンバンク
- 研究期間:2001~2005年度
- 研究担当者:御子柴義郎、大同久明、重盛 勲(中信農試)、佐藤 尚(中信農試)、大久保博人、菅原幸哉
- 発表論文等:御子柴ら(2002)日植病報 68(1):70