エンドファイト感染ペレニアルライグラスはアカヒゲホソミドリカスミカメに耐虫性を示す

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要約

ペレニアルライグラスにエンドファイトが感染すると、斑点米カメムシの重要種アカヒゲホソミドリカスミカメの選好性が著しく低下し、給餌しても吸汁せずに絶食死する。この現象はアカヒゲホソミドリカスミカメのすべての生育ステージで観察される。

  • キーワード:エンドファイト、耐虫性、アカヒゲホソミドリカスミカメ、虫害
  • 担当:畜産草地研・飼料生産管理部・害虫管理研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7557、電子メールtakuyas@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

宿主植物に耐病虫性や耐乾性を賦与する内生共生糸状菌(エンドファイト)は、農作物の形質改良手段として注目されている。本研究では、エンドファイトが斑点米カメムシの重要種アカヒゲホソミドリカスミカメの生育に及ぼす影響を調査するとともに、そのメカニズムの解明を行うことで、エンドファイトを利用した斑点米カメムシ類防除法の開発への基礎知見を得る。

成果の内容・特徴

  • Neotyphodium属のエンドファイトに感染したペレニアルライグラスは、アカヒゲホソミドリカスミカメに耐虫性を示すことを明らかにした。
  • ポット栽培した感染植物にアカヒゲホソミドリカスミカメ孵化幼虫を放飼した結果、対照とした非感染株が加害により枯死する条件下でも全く加害されなかった(図1)。対照では放飼虫の92%が2齢に達し、56%が成虫になったが、感染株に放飼した幼虫は全く生育できなかった。(表1左側)。
  • 切り取った葉片を用いた耐虫性評価法により、少量の植物でもポット試験と同様の実験を可能にした(表1右側)。これにより感染植物へのアカヒゲホソミドリカスミカメ孵化幼虫の選好性を検討したところ、感染株は非感染株と比較して著しい選好性の低下があり(表2)、また、絶食させた場合とほぼ同様の生存曲線(図2)を示したことから、顕著な選好性の低下(忌避作用)による吸汁回避が耐虫性をもたらしていると考えられた。

成果の活用面・留意点

  • アカヒゲホソミドリカスミカメへの耐虫性程度を指標とした有用エンドファイトの探索が可能になる。
  • 本研究で供試したエンドファイト感染ペレニアルライグラスは家畜毒性も有するため、飼料作物としては利用できない。

具体的データ

表1)エンドファイト感染・非感染ペレニアルライグラスにおけるアカヒゲホソミドリカスミカメの2齢および成虫到達率

 

表2)エンドファイト感染・非感染ペレニアルライグラスにおけるアカヒゲホソミドリカスミカメ各発育ステージの選好性,生存率

 

図1)エンドファイト感染および非感染ペレニアルライグラスへのア カヒゲホソミドリカスミカメ放飼試験

図2)エンドファイト感染ペレニアルライグラスにおけるアカ ヒゲホソミドリカスミカメ孵化幼虫の生存曲線

その他

  • 研究課題名:エンドファイト感染牧草の耐虫性機構の解明
  • 予算区分:交付金・所戦略(若手シーズ培養)
  • 研究期間:2002~2005年度
  • 研究担当者:柴卓也、菅原幸哉、神田健一、森本信生