放牧草は搾乳牛に対してサイレージと同等の物理性を持つ

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要約

放牧草またはサイレージを同程度含む飼料を搾乳牛に給与して比較したとき、RVIは2つの飼料で同程度であった。また、NDF含量に対する乳脂率の関係に差はなく、放牧草はサイレージと同等の物理性を持つ。

  • キーワード:永年草地・放牧、放牧飼養、乳牛、放牧草、RVI
  • 担当:畜産草地研・放牧管理部・放牧飼養研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7809、電子メールtoga@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

放牧飼養されている乳牛では低脂肪乳が発生することがあり、その原因として放牧草の物理的有効性が低いことや脂肪酸構成の相違の可能性が指摘されている。集約放牧では牧草がとくに若く短い状態で利用されるため、第一胃の恒常性を保つ粗飼料としての働きが弱い可能性がある。そこで、放牧草の搾乳牛に対する粗飼料源としての栄養特性を明らかにするため、放牧草を青刈り給与し、採食特性、第一胃性状から物理性をサイレージと比較した。

成果の内容・特徴

  • 再生期間20日程度で青刈りした春期または夏期の放牧草を表1の組成で含む飼料(G区)は、サイレージを同程度含む飼料S区に比べて採食時間が長い傾向があるが、採食+反芻時間に差がない。また、その粗飼料価指数(RVI=(採食+咀嚼時間)/乾物採食量)は両区とも約55分/kgで、乳脂率3.5%を維持する指標とされる31分より長い。(表2)
  • 第一胃液のpHは春期の放牧草のG区で6.4、夏期の放牧草のG区で7.0といずれも6以上あり、RVIが長いことを反映して、第一胃液は唾液分泌による十分な緩衝能があると考えられる。また、酢酸/プロピオン酸比(A/P比)も3以上あり、乳脂率3.5%を確保するには適正な比である(表2)。
  • 乳脂率低下に関わるとされる摂取飼料中のNDF含量と乳脂率との関係は、G区とS区で有意な差はない。両区のデータをまとめると摂取飼料中のNDFと乳脂率には有意な負の相関がある(図1)。
  • これらの結果から、放牧草は搾乳牛に対してサイレージと同等の物理性を持つと考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 搾乳放牧研究における乳脂率改善技術の開発のための基礎データに活用できる。
  • 放牧草主体飼料の物理性あるいはNDFの乳脂率への関与は、サイレージ主体飼料と同程度であることがわかったが、放牧での低脂肪乳の回避技術は生草の脂肪酸組成等を含めたより広範な検討が必要である。

具体的データ

表1.給与飼料の組成と採食量

表2.搾乳牛に対する採食量と粗飼料特性

 

図1 飼料中のNDF含量と乳脂率の関係

その他

  • 研究課題名:放牧草の粗飼料特性の解明とタンパク質制御による栄養バランスの改善
  • 予算区分:21世紀6系
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:栂村恭子、大槻和夫、安藤貞、須藤まどか