環境温度の急変は牛呼吸器免疫能を変調させる
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要約
温熱刺激を受けた牛から採取した気管支肺胞洗浄(BAL)液中のマクロファージ化学発光(CL)能は低下し、リンパ球CD4+/CD8+比は上昇することから、温度環境の急変は呼吸器免疫能を変調させ、呼吸器病発症の一誘因となることが示唆される。
- キーワード:乳牛、飼養管理、気管支肺胞洗浄液、呼吸器、免疫、化学発光能、CD4+/CD8+比
- 担当:畜産草地研・放牧管理部・衛生管理研究室
- 連絡先:電話0287-37-7239、電子メールhishizak@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
入牧時の輸送や入牧後の環境変化にともない、放牧家畜が呼吸器等の損耗性疾病に罹患するケースは多い。本症の誘因には、環境の急変がストレッサーとして呼吸器に直接作用し、組織内が昜感染状態になっていることが考えられるが、その詳細は不明である。本研究では、放牧現場で遭遇し得る環境温度の急変をストレッサーとしてホルスタイン種去勢育成牛に負荷し、その時の呼吸器局所におこる免疫能動態について検証する。
成果の内容・特徴
- 暑熱感作では、24℃・14日間飼養し、その後1日あたり34℃・6時間および24℃・18時間の周期で7日間感作した後、再び24℃・7日間飼養した。一方、寒冷感作では、20℃・14日間飼養し、1日あたり0℃・12時間および20℃・12時間の周期で14日間感作した後、再び20℃・7日間飼養した。採材は7日ごと定刻午前9時にBAL液を回収し、分析に供した(図1)。
- 呼吸器内に最も多く存在し、異物排除に重要な働きを担うマクロファージの機能をCL法により評価すると、CL能は暑熱感作により有意に低下(p<0.05)し、感作終了後には感作前レベルにまで回復する(図2A)。一方、寒冷感作によりCL能は漸次減少するが、感作終了後には感作前レベル以上に増加する。
- 呼吸器内でマクロファージに次ぎ多く存在し、細胞性免疫に重要なリンパ球の構成について調べると、暑熱および寒冷により、CD4+細胞の増加に伴うCD4+/CD8+比(呼吸器免疫評価指標の一種)の上昇が認められ、感作後はすみやかに回復する(図2B)。
- 環境温度の急変がストレッサーとして呼吸器系に作用し、局所内免疫能を変調させることから、これが呼吸器病発症の一誘因となることが示唆される。
成果の活用面・留意点
- 牛の呼吸器内における局所免疫機序を知る上で有用な基礎データとなる。
- 本法によるBAL液採取には、ある程度の熟練が必要である。また、採取法自体による呼吸器への影響はない。
具体的データ


その他
- 研究課題名:放牧環境変化が牛の呼吸器免疫能に及ぼす影響
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2001~2002年度
- 研究担当者:石崎宏、花房泰子、仮屋喜弘