堆肥用ハウス乾燥施設の乾燥床面積設計法
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要約
堆肥を乾燥する場合、ハウス乾燥施設の乾燥床面積を、従来の設計基準である水分蒸発量(kg/m2・日)を用いて設計すると過小となる。水分30%程度までの堆肥の乾燥では、含水率と経過日数には高い負の相関があり、乾燥床面積の設計には日乾減率(m2当たり日水分減少量)を設計基準として提案できる。
- キーワード:畜産環境、乳牛、ハウス乾燥施設、堆肥乾燥、設計基準、日乾減率
- 担当:畜産草地研・畜産環境部・施設工学研究室
- 連絡先:電話0287-37-7814、電子メールnobuito@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地
- 分類:行政・参考
背景・ねらい
戻し堆肥を家畜の敷料や水分調整材として利用するためには家畜ふん尿を適切に堆肥化するとともにその水分が重要となる。戻し堆肥を安全に利用するためには含水率40%以下が適当といわれている。しかし、生産される堆肥の多くは水分が高いため、堆肥化後に乾燥する必要がある。既存のハウス乾燥施設は生ふんやスラリーの乾燥に用いられる場合が多く、堆肥の乾燥に利用されている例は少ない。そこで、生産した堆肥を敷料等への利用を容易にするため、ハウス乾燥施設における堆肥の乾燥について検討する。
成果の内容・特徴
- ハウス乾燥施設における堆積高20cmの堆肥乾燥経過を図1に示す。堆肥の乾燥速度は季節により変動するが、堆肥の含水率は30%程度まで一様に減少する。
- ハウス乾燥施設の乾燥床面積の設計に用いられている水分蒸発量(春~秋利用の場合 3kg/m2・日、周年利用の場合 1.5kg/m2・日)によって算出した堆肥の推定水分は、実測値と適合せず(図2)、従来の水分蒸発量を基準とした設計では乾燥床面積は過小となる。
- 含水率30%程度までの乾燥経過日数と含水率には相関係数ー0.99以上の高い負の相関があり(表1)、堆肥の水分は一次回帰式で近似される。その回帰係数の絶対値は日乾減率と言い換えられ、堆肥を乾燥しようとする季節の日乾減率によってハウス乾燥施設の乾燥床面積を設計できる。
- 堆肥水分はほぼ表層5cm以内から蒸発するため、日乾減率は堆積高さによって異なる。このため、堆積高さが異なる場合は既知の堆積高さにおける日乾減率から単位面積当たりの日水分蒸発量を求め、必要とする堆積高さに応じた日乾減率を算出する。
成果の活用面・留意点
- 発酵を伴わない堆積高さ30cm程度までの堆肥用ハウス乾燥施設の設計に適用する。
- 本成果で示した日乾減率は北関東地域に適用できる。他地域では気象条件に応じて決定する必要がある。
- 設計した季節以外の堆肥乾燥では乾燥程度が劣る場合があるので、その場合には乾燥を促進するための対策を講じる必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:2段式堆肥乾燥施設における効率的乾燥技術の開発
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2000~2002年度
- 研究担当者:伊藤信雄、阿部佳之、福重直輝、伊吹俊彦
- 発表論文等:伊藤信雄(2000)畜産コンサルタント36(11)49-52.