トウモロコシ群落からの花粉の飛散距離および密度

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

トウモロコシの花粉は少なくとも250mは飛散する。飛散する花粉の密度は、20aの花粉源の場合、250mで1cm2あたり0.5個程度で、250m付近の除雄したトウモロコシにおける着粒率は1.8%程度である。

  • キーワード:トウモロコシ、花粉、花粉飛散、飼料作物育種
  • 担当:畜産草地研・飼料作物開発部・ヘテロシス研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7551、電子メールhdaido@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

遺伝子組換え作物については農林水産省の指針に基づいて環境安全性の評価および確認が行われている。現在、国内では遺伝子組換え作物の一般栽培は行われていないが、一般栽培された場合、とくに風媒他殖性作物であるトウモロコシについては花粉の飛散による非組換え体への交雑の問題が論議となっており、トウモロコシ花粉の飛散の実態に関する科学的知見を得ることが緊急の課題となっている。ここでは、トウモロコシ花粉の飛散距離と密度、および飛散花粉による交雑率を明らかにすることを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 風上側(開花盛期の平均風速・風向:0.6~1.0m/s・南南西、最大風速・風向:5.0m/s・南南西および南南東)の花粉源群落(面積20a,稈長約2.5m)からの花粉による、雄穂抽出前に除雄したレシピエント試験区における着粒率を調査するとともに、距離別にダーラム型花粉採集器を設置して花粉を捕集し、飛散密度を測定した。
  • 花粉源からの距離別の開花期間中の積算花粉落下数は、1m地点では916個/cm2で、距離が大きくなるにしたがって急激に減少し、100mを越えると1個/cm2以下である。250m地点でも花粉が捕集され、積算落下数は0.5個/cm2である(図1)。
  • 除雄した距離別の試験区における着粒率の平均値は、10m区では74%であるが、80~100m区では約7%、150m以上では2%程度である。250m区においても着粒がみられ、着粒率は1.8%である(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 遺伝子組換えトウモロコシの安全性評価のための基礎的知見となる。
  • 本成果における着粒率はレシピエントを除雄した条件で得られたものであり、一般栽培では当該個体または当該群落の花粉との競合条件にあることに留意する。

具体的データ

図1.花粉源(20a)からの距離 別に設置したダーラム型花粉採 集器に捕集された開花期間中の 積算花粉数

 

図2.花粉源(20a)からの距離 別に設置した除雄栽培区におけ る雌穂の着粒率

その他

  • 研究課題名:トウモロコシの花粉飛散に関する調査
  • 予算区分:緊急調査
  • 研究期間:2001年度
  • 研究担当者:大同久明、川島茂人(農環研)、黄川田智洋、村木正則
hdaido@affrc.go.jp