サイレージ用トウモロコシ中のダイオキシン類の動態

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要約

サイレージ用トウモロコシに蓄積するダイオキシン類濃度は、生育期間の長さに比例して高くなり、外気に接する面積の多い葉身で高い。おもに空気と土壌に由来し、値から選択的に吸収されるものは少ない。通常のサイレージ調製過程ではダイオキシン類は分解しない。

  • キーワード:草地生産管理、ダイオキシン、サイレージ、サイレージ用トウモロコシ
  • 担当:畜産草地研・飼料生産管理部・栽培生理研究室、家畜生産管理部・飼料調製研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7802、電子メールshunji@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

ダイオキシン類は、排出源から環境中へ拡散されることによって、人体への影響が大きくなっている可能性が指摘されてきた。わが国における、食品から摂取されるダイオキシン類のうち、4分の1が畜産物由来とされている。畜産物への蓄積経路の最も基本である飼料作物の栽培過程におけるダイオキシン類の蓄積実態及びその機構については、その重要性にもかかわらずこれまで有用なデータの蓄積がほとんどない。そのため、ダイオキシン類の飼料作物、特にサイレージ用トウモロコシへの吸収・蓄積機構を明らかにし、収穫後のサイレージ調製及び貯蔵期間中におけるこれらの物質の動態を解明する。

成果の内容・特徴

  • サイレージ用トウモロコシへのダイオキシン類蓄積濃度は、品種及び生育ステージに関係なく生育期間が長くなるにつれて増加する(図1)。
  • ダイオキシン類濃度を部位別にみると、葉身で最も高く、雌穂にはいずれのダイオキシン類もほとんど検出されない(図2)。この差異はおもに外気にさらされている面積の違いによると推察される。
  • サイレージ用トウモロコシに含まれるダイオキシン類は、おもに大気中のガス態物質および土壌に由来すると考えられる。トウモロコシの植物体上部、中部に比べて土壌の付着しやすい下部で化合物の組成が土壌と類似することから、土壌由来のダイオキシン類は根から吸収されて植物体内に移行するよりむしろ土壌の直接的な付着によって蓄積する(図3)。
  • サイレージ調製前後でトウモロコシ中の化合物別ダイオキシン類濃度は減少せず、通常のサイレージ調製によるダイオキシン類の分解は期待できない(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 農産物へのダイオキシン類の蓄積実態の基礎資料となる。
  • すべてのダイオキシン濃度の分析値は、一回の分析によるものであり、絶対濃度は参考データとして用いられるべきである。

具体的データ

図1.熟期の異なる3 品種の各生育期における ダイオキシン類量と生育日数との関係

図2.トウモロコ シ植物体部位別のダイオキシン類蓄積割合

 

図3.トウモロコシ植物体の高さ別蓄積ダイオ キシン類及びガス態物質と土壌中のダイオキ シン類

 

図3、4の凡例

図4.サイレージ調製前後のトウモロコ シ中のダイオキシン類の変化

その他

  • 研究課題名:ダイオキシン類の飼料作物への吸収・蓄積機構と調製貯蔵過程における動態の解明
  • 予算区分:環境ホルモン
  • 研究期間:1999~2002年度
  • 研究担当者:黒川俊二、上垣隆一(農環研)、吉村義則、蔡義民
  • 発表論文等:1)Uegaki et al. (2001). Olganohalogen Compounds, 51, 302-305.
                      2)Uegaki et al. (2001). Olganohalogen Compounds, 57, 81-84.