放牧草地におけるダイオキシン類濃度と動態

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要約

畜産草地研究所山地畜産研究部のリードカナリーグラス草地における放牧牛の牛筋肉中ダイオキシン濃度は、0.073pg-TEQ/gWMである。放牧牛に蓄積されたダイオキシン類は、大気中のガス状物質中のダイオキシン類が牧草に付着し、それを牛が摂取・吸収したものであり、降下煤塵や土壌中のダイオキシン類による影響は小さい。

  • キーワード:草地管理、環境保全、放牧草地、肉牛、ダイオキシン類動態
  • 担当:畜産草地研・山地畜産研究部・山地草地研究室、山地土壌研究室
  • 連絡先:電話0267-32-2356、電子メールshimoda@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

放牧草地においてダイオキシン類は、大気から降下し牧草や土壌などから牛体中に取り込まれる移動が推定される。そこで、ダイオキシン類の牧草、牛、および各種環境媒体中に含まれる量を測定することにより、草地系におけるダイオキシン類の動態を解明し、放牧牛や環境への影響を回避・低減する方策の検討に役立てる。

成果の内容・特徴

  • 畜産草地研究所山地畜産研究部のリードカナリーグラス草地における主要な媒体のダイオキシン類毒性等量換算濃度は、ガス状物質と粒子状物質を含む大気で0.046pg-TEQ/m3、牧草で0.55pg-TEQ/gDM、土壌で2.4pg-TEQ/gDMである(表1)。放牧牛の筋肉中には0.073pg-TEQ/gWM、脂肪中には3.1pg-TEQ/gWMの濃度でダイオキシン類が存在し、筋肉は脂肪の約1/40の濃度である。
  • ダイオキシン類には多くの異性体があるが、ダイオキシン類の草地への供給源である大気中のガス状物質では2,3',4,4',5-P5CB(b)が、大気中の粒子物質やより粒子の大きい降下煤塵では08CDD(a)が主成分である(図1)。
  • 牧草と牛体はbタイプ、土壌はaタイプであり、牛糞はbタイプにaタイプが加わっている(図1)。これは、大気中のガス状物質が空気中を漂い牧草に付着し、それを放牧牛が食べ体内に蓄積されるが、大気中の粒子の大きい物質は空気中から直接土壌に降下してしまい、牛体への蓄積には関与していないことを示す。ただし、牛糞にaが見られることから、牛が土壌を摂取していることが考えられるが、牛体への蓄積には関与していないと考えられる。
  • 以上のことを加味し、リードカナリーグラス草地における採食量・排糞量の測定値から推定すると、放牧牛は、牧草から8.3~10.5pg-TEQ/kg体重/dayダイオキシン類を摂取し、糞として9.8~14.2pg-TEQ/kg体重/day排出する。しかし、糞として排出されるダイオキシンのうち、牧草由来のものは6.3~9.1pg-TEQ/kg体重/dayと算出され、1.4~2.0 pg-TEQ/kg体重/dayのダイオキシン類が牛体に移行する。

成果の活用面・留意点

  • 放牧草地での各種媒体や放牧牛のダイオキシン類の濃度が明らかになり、肉牛や環境への影響の低減を考える際の重要な資料となる。
  • 大気中ダイオキシン濃度の違った場所では、牛体への蓄積量が変化する。

具体的データ

表1.ダイオキシン類の濃度

 

図1.各サンプルに含まれるダイオキシン類の異性体濃度分布

 

その他

  • 研究課題名:草地におけるダイオキシンの動態及び牧草と草地外への影響
  • 予算区分:環境ホルモン
  • 研究期間:1999~2002年度
  • 研究担当者:下田勝久、東山雅一、山本博、山田大吾、渋谷岳