花粉を飛散させないトールフェスク新品種候補「MST1」

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要約

トールフェスク「MST1」は、花粉を飛散させないため花粉症を引き起こさない品種として、「道路法面保護・緑化」・「公園緑地」などでの利用が期待される。

  • キーワード:トールフェスク、花粉、花粉症、道路法面、飼料作物育種
  • 担当: 畜産草地研究所・飼料作物開発部・育種工学研究室
  • 連絡先:電話 0287-37-7690、電子メール masafuji@affrc.go.jp
  • 区分: 畜産草地
  • 分類: 技術・普及

背景・ねらい

現在、花粉症が社会問題となっているが、その原因の一つとして花粉飛散量が多く、抗原性の高いイネ科牧草がある。イネ科牧草の中でトールフェスクは、牧 草地だけでなく、「道路法面保護・緑化」や「公園緑地」などで、広く全国的に利用され、花粉症の原因植物として問題となっている。そこで、この問題解決の ために、「花粉を飛散させないトールフェスク品種」の育成を行った。

成果の内容・特徴

    本品種は、イタリアンライグラスの品種「ワセアオバ」にトールフェスクを連続戻し交雑して、種子収量で選抜を行ってきた系統である。戻し交雑5世代目よりナンリョウを花粉親として用いて採種を行っており、戻し交雑10世代目を原原種として利用する。
  • この品種は、通常の品種と異なり、全く花粉を飛散させない(表1)。
  • 花粉を出さないトールフェスク(MST1育成過程の個体)に他品種の花粉がかかっても、その後代は全て花粉を飛散させない(表2)。そのため、この品種に種ができても、こぼれ種による花粉飛散の心配はないと思われる。
  • この品種は、花粉稔性以外の主要形質の大部分は、既存トールフェスク品種の変異に含まれる。しかしながら、この品種の主要形質は、花粉親であるナンリョウの主要形質とは異なる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 花粉を飛散させないトールフェスクとして、「道路法面保護・緑化」や「公園緑地」などでの利用が期待される。
  • この品種は、「ナンリョウ」を同一圃場に栽培することにより、種子生産を行う。

具体的データ

表1 MST1およびトールフェスク4品種の花粉稔性 表2 花粉を飛散させないトールフェスク(MST1育成過程の個体)と各種トールフェスク品種を交配した後代の花粉稔性 表3.MST1の主要特性

 

その他

  • 研究課題名:イタリアンライグラス細胞質を用いた新規トールフェスクの作出
  • 課題ID:12-05-03-01-03-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:藤森雅博、小松敏憲、間野吉郎、佐藤広子、高溝正、内山和宏、荒川明、秋山典昭、近藤聡(雪印種苗)、立花正(雪印種苗)