亜鉛給与は牛の輸送ストレス由来の白血球数や化学発光能の上昇を抑える

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要約

有機亜鉛の給与は、子牛の輸送負荷時の白血球数および全血化学発光能の上昇を抑制することから、ストレス反応を軽減する可能性がある。

  • キーワード:ウシ、有機亜鉛、輸送ストレス、家畜栄養
  • 担当:畜産草地研・家畜生理栄養部・反すう家畜代謝研究室
  • 連絡先:電話029-838-8655、電子メールwitoko69@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

一般にミネラル、特にクロムおよびセレンの免疫賦活化作用については広く認識されており、亜鉛についても家畜の成長および免疫に関与していることが示唆さ れている。しかしながら、その結果については様々であり、また亜鉛とストレス、特に輸送ストレスとの関連を調べた報告はきわめて少ない。
そこで本課題では、離乳後の子牛に2時間の輸送ストレスを負荷し、子牛のストレスに対するメチオニン亜鉛給与の影響を検討する。

成果の内容・特徴

  • ホルスタイン種子牛24頭を供試し、亜鉛給与区には4週齢から乾物給与量1kgあたり亜鉛として150mg(メチオニン亜鉛、10%亜鉛含有)を毎朝1回給与する。
  • 亜鉛を給与した区の血漿亜鉛濃度は無給与区と比較して有意に高く、輸送により両区とも低下を示す(図1)。血漿中のメチオニン濃度に差は認められない。
  • 増体日量は同様の増加を示し、亜鉛給与区0.63±0.14kg/日、無給与区0.62±0.08kg/日である。
  • 白血球数および全血化学発光能の経時推移を図2-a,bに示す。平常時においては、亜鉛給与の影響および日内変動はほとんど みられない。輸送ストレス負荷時の亜鉛給与区の白血球数は、無給与区と比較して、輸送後4時間および6時間目に多い傾向にある。また、それぞれの区におい て輸送後の値を輸送直前の値と比較すると、無給与区では有意な上昇が輸送後6時間まで継続するが、亜鉛給与区では輸送後4時間までであり、亜鉛給与区では 輸送ストレスの影響が早く収束すると考えられる。全血化学発光能でも有意ではないが同様の推移が認められる。すなわち、白血球数および全血化学発光能を指 標として子牛のストレス応答を評価すると、亜鉛給与区では輸送ストレス負荷時の反応が抑制される傾向にある。

成果の活用面・留意点

  • 飼料添加(約2g)により利用できるため、注射と比較して作業上の負担が少ない。
  • ストレスに対する有機亜鉛の給与効果には個体差があることに留意する。
  • 亜鉛の給与量は、飼料中亜鉛含量および中毒発生限界(乾物飼料1kgあたり500mg、日本飼養標準乳牛1999年版より)に十分留意して決める。

具体的データ

図1.血漿亜鉛濃度の週次推移

 

図2-a) 白血球数、2-b)全血化学発光能の経時推移

 

その他

  • 研究課題名:乳牛のエネルギーバランスと免疫機能の関連性
  • 課題ID:12-02-03-*-04-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:野中最子、中島一喜、鎌田八郎、柾木茂彦、寺田文典、高橋秀之(動物衛生研)
  • 発表論文等:ストレス抑制剤、特開2003-261451