バイオガスを利用した窒素除去・脱硫装置

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要約

バイオガス中のメタンを炭素源として使い汚水中の窒素除去を行う装置。装置にはバイオガスと空気が供給されるが、反応で使われなかった余剰メタンは装置から高濃度で排出されかつ脱硫もされている為ボイラーでの燃焼や発電に利用可能である。

  • キーワード:家畜ふん尿、畜産環境、畜舎排水、脱窒、バイオガス、メタン発酵、脱硫
  • 担当:畜産草地研・畜産環境部・資源化研究室
  • 連絡先:電話029-838-8676、電子メールmwaki@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

汚水やスラリーの嫌気性処理は省エネルギーの点から注目されている方法であるが、その処理水または脱離液には排水基準以上の窒素が含まれており窒素除去処 理が付加される場合が多い。しかし有機物含量の低い汚水からの窒素除去では脱窒に電子供与体としての有機物が必要であり、メタノール等の薬剤の添加は新た なコスト負担となっている。そこで汚水処理における薬剤代削減と資源の有効利用を目的として、嫌気性処理で発生したバイオガス中のメタンを脱窒の有機炭素 源として利用する技術の開発を行う。

成果の内容・特徴

  • 畜舎汚水処理施設由来の汚泥と硝酸無機培地を用いた培養試験をおこなった結果、メタンと酸素が存在する条件下では脱窒がおこ ることを確認した(図1)。この反応はメタン酸化細菌と脱窒菌の共存によっておこると考えられている。前者によるメタン酸化反応の中間代謝物が汚水中に供 給され、後者による脱窒の為の有機物として利用される。また同時に前者による酸素の消費により汚水中の溶存酸素濃度が低下し、脱窒に適した条件となる。
  • 脱窒反応に利用されなかったメタンは、低濃度で酸素と混合して装置から排出されるとボイラーや発電機で利用できない。この問 題を解決する装置を考案した(図2)。密閉された水槽で、仕切板の存在によって上部気相は完全に二つに、液相は部分的に分割されている。メタンと酸素を仕 切板を挟んだ位置で水槽底部から供給する。液相では溶存メタンと溶存酸素が混在しメタン脱窒反応がおこるが、気相のメタンと酸素はほとんど混合されること なく装置外に排出されメタンの利用に支障を来たさない。
  • 本装置は嫌気性汚水処理と散水ろ床を経た豚舎汚水を実際のバイオガスを用いて処理した場合、表1の運転条件下で平均 0.14 kgN/m3/dayの窒素除去能力を示す(表2)。
  • メタンは装置を通過した後も平均60%を保つ(表2)。ただし常に60%以上を保つ為にはバイオガスの循環回数を20回以下にとどめる必要がある。 5. 除去窒素(mol)あたり消費されるメタン(mol)は平均3.0である。 6. 本装置は脱硫装置としても機能する(表2)。 7. 空気を通気した側から排出されるガス中のメタン濃度は爆発範囲(空気中におけるメタン5-14%)よりも十分低く抑えられ、安全に大気放出が可能な濃度である(表2)。
  • 除去窒素(mol)あたり消費されるメタン(mol)は平均3.0である。
  • 本装置は脱硫装置としても機能する(表2)。
  • 空気を通気した側から排出されるガス中のメタン濃度は爆発範囲(空気中におけるメタン5-14%)よりも十分低く抑えられ、安全に大気放出が可能な濃度である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 嫌気性汚水処理の後処理、メタン発酵の脱離液の処理、メタンガスの発生する埋め立て地において浸出水の処理に活用できる。また脱硫装置の必要な施設に活用できる。
  • バイオガス中メタンの25%を利用すると仮定した場合、除去する窒素100 mg/Lに対して1.9 L/L程度メタンの発生する施設が望ましい。
  • メタンガスは可燃性であるため、防爆装置などの安全対策をとる必要がある。

具体的データ

図1. メタンと酸素の脱窒への影響 図2.メタン利用脱窒装置の構造と汚水処理システム 表1.装置の形状と運転条件

 

その他

  • 研究課題名:嫌気性汚水処理に適用する新規高度処理技術の開発
  • 課題ID:12-08-01-*-21-03
  • 予算区分:総合的開発(家畜排泄物)、バイオリサイクル
  • 研究期間:1997~2000~2005年度
  • 研究担当者:和木美代子、田中康男、長田隆、鈴木一好、藤田正憲(阪大院工)、池道彦(阪大院工)
  • 発表論文等:1) 特許出願中(特開2003-170189)
                      2)Waki et al. (2002) Appl. Microbiol. Biotechnol. 59:338-343.