温室内栽培イチゴの生育障害に及ぼす高塩類堆肥の影響
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要約
黒ボク土壌において、温室内栽培イチゴ(とちおとめ)の茎葉は土壌ECが70mS/m以上で枯死する。高塩類堆肥(EC値が860~1,150mS/m)を利用するには、土壌ECが70mS/mを超えないように施用する必要がある。
- キーワード:イチゴ、生育障害、堆肥、塩類、土壌EC、温室栽培、土壌肥料
- 担当:畜産草地研・飼料生産管理部・上席研究官、作物栄養研究室
- 連絡先:電話0287-37-7559、電子メールthtnk@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地、共通基盤・土壌肥料
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
良質堆肥のEC値(電気伝導率)の目安は500mS/mとされるが、牛ふん堆肥の43%はこの目安を越える高塩類堆肥である。高塩類堆肥は利用条件が明ら
かでないため、耕種農家は利用を避ける傾向にある。耕種農家による高塩類堆肥の適正な利用を促進するためには、作物の種類や施用法などの利用条件を明らか
にする必要がある。高塩類堆肥に対する温室内栽培イチゴの生育反応について解明し、生育反応に基づく施用の目安を作成する。
成果の内容・特徴
- 10aあたり2tおよび4t相当量の各堆肥と化学肥料(窒素、リン酸、カリウムとも5kg) を土壌に混合し、翌日にイチゴ
(3~5葉の「とち おとめ」の子株)を移植し、土壌 水分を畑状態に維持しながら温室でポット(1万分の1アール)栽培する。イチゴの移 植は4月11
日と10月10日である。イチゴの茎葉はEC値が1,150mS/mを越える高塩類 堆肥の2tおよび4t施用区で、移植後1週間以内に枯死する。一方、
化学肥料区(窒素、 リン酸、カリウムをそれぞれ15kg/10a相当量施肥)と対照の堆肥では、4t施用しても塩 類障害は発生しない(図1)。
- 塩類によるイチゴ茎葉の被害症状は、葉縁が黄化し、やがて枯死するとともに、下位 葉の葉色が暗緑色を呈する(図2)。
- 土壌のEC値が70mS/m以上でイチゴの地上部乾物重(緑葉とランナーの合計)が低
下しはじめ、85mS/m以上になるとイチゴは枯死する。したがって、イチゴ茎葉の健全 な生育のためには栽培開始時の土壌ECを70mS/m以下に保つ必要がある(図3)。
成果の活用面・留意点
- 温室内でのイチゴ栽培における堆肥利用と施肥管理に活用できる。温室内の黒ボク土 で、高塩類堆肥を施用してイチゴを栽培する場合、土壌ECの数値が参考となる。
- 高塩類堆肥とは良質堆肥の目安とされる500mS/mを超えた堆肥のことである。EC値 が860mS/m以上の高塩類堆肥と黒ボク土を用い、温室内でポット試験した結果であり、 堆肥のEC値や土壌の種類によってはイチゴ茎葉の生育反応が異なる可能性がある。
具体的データ
その他
- 研究課題名:塩類が濃縮された堆肥の作物栽培利用条件の解明
- 課題ID:12-06-02-*-03-03
- 予算区分:バイオリサイクル
- 研究期間:2002~2003年度
- 研究担当者:畠中哲哉、須永義人、川地太兵、江波戸宗大