放牧馴致と呼吸器病などの疾病や日増体量との関係

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要約

放牧前に気象環境に馴致させたり、群飼や青草・粗飼料主体の飼料に慣れさせると呼吸器病や消化器病による損耗が少なくなり、また、日増体量も増加する可能性がある。

  • キーワード:ウシ、放牧、放牧馴致、疾病予防、増体量
  • 担当:畜産草地研・放牧管理部・衛生管理研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7239、電子メールykariya@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

放牧牛は入牧に伴って気象環境や飼料が急激に変わるため大きなストレスを受けると考えられる。これらのストレスを緩和するためには放牧環境にあらかじめ馴 致させることが必要とされている。しかし、放牧馴致の疾病予防効果については明らかにされていない。そこで、まず放牧前の飼養方法の違いと入牧後の疾病治 療率とが、どの様に関係するかを調べ、放牧馴致の有効性を指摘する。

成果の内容・特徴

  • 栃木県北部の2カ所の公共牧場へ放牧された初放牧ホルスタイン種雌牛の農家における放牧馴致状況を3年間調査した。気象環 境、群飼、青草および粗飼料への馴致の有無と放牧期間中の呼吸器病などによる治療率(牧場の獣医師が判断)や増体量との関係を調べた(表1)。放牧期間 中、全ての牛はほぼ同様に飼養され、予防ワクチンや駆虫薬などの衛生対策も同様に行なわれた。
  • 入牧前に1カ月間以上屋外で飼養するという気象環境への馴致を行うとストレスによる生体防御機能の低下が発症の要因の一つと考えられる呼吸器病や消化器病の治療率が抑えられる(図1)。
  • 壁のない開放式牛舎で屋外環境に近い状態で飼養しても、治療率が低下する傾向がある(図1)。
  • 屋外の環境に馴致させず舎飼から直接放牧すると治療率は高く、症状も重くなりやすいため、放牧中に死亡したり放牧の継続が困難で途中退牧する牛がみられる(図1)。
  • 放牧前に単独で飼養すると群飼養に馴致させた牛より消化器病や呼吸器病で治療する牛が多く、症状も重くなる傾向がある(図1)。
  • 放牧に備えて数週間かけて濃厚飼料を徐々に減少して粗飼料に慣れさせることは消化器病や呼吸器病の発症予防に有効である。また青草の給与によっても治療率が低下する傾向がある(図1)。
  • 放牧前に屋外環境や群飼及び放牧中の飼料に慣れさせることにより放牧中の日増体量の増加が期待できる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 放牧馴致の有効性が示唆され、馴致技術開発の方向となる。
  • 気象環境、群飼及び飼料馴致の全てを行うのが望ましいが、単独でも放牧期間中の疾病治療率を低下させる効果は期待できるので、まずできるところから導入する。

具体的データ

表1 調査農家における放牧馴致の方法および調査頭数

 

図1.放牧馴致の形態別に比較した放牧期間中の呼吸器病等による治療率 図2.放牧馴致の形態別に比較した放牧期間中の日増体量

 

その他

  • 研究課題名:放牧前飼養法の相違が入牧後の疾病発生に及ぼす影響
  • 課題ID:12-03-03-02-06-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:仮屋喜弘、石崎宏、花房泰子