PIXEによる各種試料中の多元素同時測定
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要約
新しい原子力利用法として期待されるPIXEによって、乾草や被毛などに含まれる各種元素含量の測定が可能である。被毛試料では、前処理を要する従来法と同程度の精度で無調製無標準法による各種元素含量の測定が可能である。
- キーワード:PIXE、乾草、血清、被毛、元素含量、ウシ、飼料利用
- 担当:畜産草地研・家畜生産管理部・資源循環研究チーム
- 連絡先:電話0287-37-7004、電子メールaokiya@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
PIXE(Particle Induced X-ray
Emission)とは、サイクロトロンから発生するイオンが試料に照射された際に生じる特性X線を測定することで対象物質に含まれる多元素を同時に定量
する分析法である。医学、理学など多方面で活用されており、草地・畜産分野での応用にも期待がもたれる。そこで血清、乾草および被毛の各種試料について
PIXEによる多元素同時測定を試み、その有用性を検討する。
成果の内容・特徴
- 各種元素含量の保証値が示されている牛血清の標準試料に関するPIXE分析値は、K、Fe、Cuといった元素において測定時の誤差は小さく保証値の84%から92%の値となる。しかし他の元素については保証値と大きくかけ離れるものがある(表1)。
- 乾草の標準試料に関するPIXE分析値は、多くの元素で保証値の78%から96%の値となり、測定時の誤差はおおむね5%未満である(表2)。
- 医学、理学分野では人間の被毛のPIXE分析は従来、細切した試料を湿式灰化して内部標準を添加したものを分析していた(従
来法)が、近年、特段の前処理と内部標準添加を要さない方法(無調製無標準法)による被毛PIXE分析が可能となっている。この方法では、被毛試料を短時
間水洗して乾燥させた後、アセトンで清拭し、3ないし5本をまとめて分析用ホルダーに接着テープで貼付するのみである。
- 牛の被毛のPIXE分析時における測定誤差は、無調製無標準法と従来法との間でほとんど変わらない(表3)ことから、牛においても無調製無標準法によって被毛のPIXE分析が簡便化できる。
成果の活用面・留意点
- 牛に関わる各種試料の元素含量をPIXEにより測定する際の基礎資料となる。
- 委託分析が可能な施設数は非常に限られている。
具体的データ
その他
- 研究課題名:PIXEの草地・畜産における応用法の確立
- 課題ID:12-02-04-*-01-03
- 予算区分:原子力
- 研究期間:1999~2003年度
- 研究担当者:青木康浩、安藤貞、山田明央、上垣隆一、山田知哉、中西直人、藤田泰仁、井村毅、須藤まどか
- 発表論文等:青木・安藤 (2001) NMCC共同利用成果報文集 9:
http://www.jrias.or.jp/jrias/index.cfm/4,1200,82,168,html