インピーダンス計測によるサイレージ水分の非破壊推定
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要約
非破壊計測であるインピーダンス計測手法を用いて、サイレージの電気的特性を計測し、ニューラルネットワークを用いて解析することで、牧草サイレージの水分を標準誤差10%程度の精度で簡易に推定可能である。
- キーワード:飼料利用、サイレージ、非破壊計測、インピーダンス、ニューラルネットワーク
- 担当:畜産草地研・家畜生産管理部・調製工学研究室
- 連絡先:電話0287-37-7803、電子メールkida@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地、共通基盤・作業技術
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
サイレージの水分計測は加熱乾燥法やトルエン蒸留法により行われており、分析は時間と労力を要するため、より迅速な非破壊計測手法が求められている。そ
こで、対象物の様々な物性を非破壊で計測可能なインピーダンス計測と、多要素系の解析に用いられるニューラルネットワークにより、サイレージの水分含量を
非破壊推定する手法を開発する。
成果の内容・特徴
- 測定サイレージは酪農家からのサンプル(120点)と所内でのサンプル(40点)の多種多様な牧草サイレージ、並びにトウモ
ロコシサイレージを用い、測定サイレージを無作為に分けて、約2/3を教師データとしてニューラルネットワークの学習用に、残りを検証用に用いる。供試サ
ンプルの水分について表1に示す。
- インピーダンス計測容器(4電極式)に計量したサイレージ(60~100g程度)を封入し、蓋を閉め所定容積(200cm3)に密閉し、インピーダンス
メータにより周波数を変化(63Hz~4MHzで25点)させた交流をサイレージに与え、そのときの電気的変化を計測することで、サイレージのインピーダ
ンス特性について計測できる。計測は非破壊手法であり、1サンプル3分程度で計測できる(図1)。
- サイレージのインピーダンス計測値には、サイレージ材料の様々な物性の影響が含まれ、そのままでは解析は困難である。そこで多要素系の解析に有用なニュー
ラルネットワークを用いた解析を行う。サイレージのインピーダンス(1サンプルあたりレジスタンスとリアクタンス50要素)とサイレージの水分値の計51
要素をニューラルネットワークに入力し、ニューラルネットワークの学習を行い、その後、学習したニューラルネットワークにインピーダンス(50要素)を入
力して、推定を試みることにより、牧草サイレージでは標準誤差は9.3%程度、トウモロコシサイレージでは標準誤差3.8%程度で推定可能である。(図
2、表1)。
- 解析には数値解析ソフトウェア(MATLAB)を用い、学習則は一般化機能を持たせたLevenberg-Marquardtアルゴリズムを用いる。学習と推定は中間層ニューロン数5程度で収束可能であり、汎用PCにより短時間で解析できる。
成果の活用面・留意点
- インピ-ダンス計測とニューラルネットワーク解析を組み合わせたサイレージ水分の非破壊計測手法研究の基礎資料として利用できる。
- 学習したニューラルネットワークは提供可能である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:サイレージ調製過程モニタリング手法の開発
- 課題ID:12-06-05-*-06-03
- 予算区分:交付金
- 研究期間:1999~2003年度
- 研究担当者:喜田環樹、天羽弘一(東北農研)、松尾守展、重田一人、田澤倫子(栃木県酪試)