トウモロコシの近縁種テオシントが持つ耐湿性遺伝子のマッピング

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要約

トウモロコシの近縁種テオシントの耐湿性に関わる不定根形成の遺伝子は第5と第8染色体に存在する。それらの近傍の分子マーカーはトウモロコシに不定根形成能を導入する際の選抜指標になる。

  • キーワード:耐湿性、トウモロコシ、テオシント、不定根、QTL、飼料作物育種
  • 担当:畜産草地研・飼料作物開発部・育種工学研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7690、電子メールmano@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

わが国のトウモロコシ栽培において湿害が深刻な問題となっており耐湿性の強化が強く望まれている。その近縁種であるテオシントは耐湿性が強く,耐湿性育種 を行う際の重要な遺伝資源と考えられる。そこで,テオシントの持つ耐湿性の主要因である不定根形成能を支配する遺伝子をマッピングし,テオシントの不定根 形成能をトウモロコシに導入する際に有用なDNAマーカーを作出する。

成果の内容・特徴

  • テオシントZea mays ssp. huehuetenangensisは湛水条件下でも良好な生育を示す。その際に地表に数多くの不定根を形成し,そこから地表の酸素を取り込んで湛水条件に適応している (図1)。
  • 実験には湛水条件下において不定根形成能が低いトウモロコシ’B64’と高いテオシントのF2集団 (実験1),その後代F3系統 (実験2) および別の交雑種子由来のF2集団(実験3) を供試した。それぞれの集団について,地表にあらわれた根の長さを指標とした不定根形成能を調査した後に連鎖地図を作成してQTL解析を行った。
  • テオシントの不定根形成能を支配するQTLが第5と第8染色体に見出され,これらのQTLは異なる実験 (環境) によっても比較的安定して発現する (図2)。
  • 今回いずれの実験においても有意であった第8染色体に見出された不定根形成能を支配するQTL近傍のSSRマーカー (bnlg162とbnlg240)をBC1F1 個体 [B64 / (B64/テオシント)] に適用したところ,これらのマーカーと不定根形成能はよく一致した。

成果の活用面・留意点

  • 今回得られたSSRマーカーを用いることでテオシントの不定根形成能の遺伝子をトウモロコシに導入できる。
  • さらに耐湿性が強いトウモロコシの育種を考えた場合,耐湿性に関連する他の要因 (根の通気組織形成能など) も考慮する必要がある。

具体的データ

図1. トウモロコシ’B64’とテオシント”Zea mays ssp. huehuetenangensis”の不定根形成能

 

図2. テオシント”Zea mays ssp. huehuetenangensis”の第5と第8染色体に見出された湛水
条件下における地表の不定根形成能を支配するQTL.

 

その他

  • 研究課題名:とうもろこしの耐湿性に連鎖するDNAマーカーの探索
  • 課題ID:12-05-02-01-05-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2000~2004年度
  • 研究担当者:間野吉郎、藤森雅博、佐藤広子、高溝正、村木正則、小松敏憲、秋山典昭