イネキチナーゼ遺伝子の導入により冠さび病抵抗性が付与された形質転換イタリアンライグラスの作出

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要約

パーティクルガン法によりイネキチナーゼ遺伝子をイタリアンライグラスに導入し、冠さび病に対する抵抗性が増大した組換え体を得る。

  • キーワード:イネ科牧草、イタリアンライグラス、遺伝子導入、発現解析
  • 担当:畜産草地研・飼料作物開発部・育種工学研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7690、電子メールtakamizo@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地、作物(生物工学)
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

イタリアンライグラスは地中海地方を原産とする寒地型イネ科牧草で、我が国では最も重要な飼料作物として東北から九州までの広範 囲で栽培されているが、 冠さび病等の糸状菌に対する耐病性の付与が最も重要な育種目標である。本研究ではイタリアンライグラスの耐病性を飛躍的に高めるこ とを目的としてパーティ クルガンにより溶菌活性のあるイネキチナーゼ遺伝子を導入する。

成果の内容・特徴

  • イネ科での発現が強いイネアクチンプロモーターにイネから単離したキチナーゼ遺伝子(Cht-2)をつないだ遺伝子発現ベクターを 構築し、パーティクルガンによりイタリアンライグラスのカルスに導入して形質転換体を作出した。
  • 導入されたキチナーゼ遺伝子がPCRで確認された形質転換体のうち代表的なものについてRT-PCRを行い、mRNAレベルでも導入遺伝 子が発現していることを確認した(図1)。
  • 上記形質転換体について冠さび病菌接種試験を行った結果、抵抗性の増大した個体が確認できた(図2、3)。それらのうち3個体 についてキチナーゼの比活性を測定した結果、非形質転換体と比較して最大で約9.2倍の比活性を示す個体が確認された(図4)。

成果の活用面・留意点

  • イタリアンラスの耐病性育種素材として活用できる。
  • 他の糸状菌病に対する抵抗性も検定する必要がある。

具体的データ

図1 RT-PCRによるイネキチナーゼ遺伝子の発現確認 P=プラスミド対照区、C=非形質転換体 図2 冠さび病菌接種後10日後の夏胞子形成度合い

 

図3 形質転換体における抵抗性の増大 図4 キチナーゼ比活性測定結果

 

その他

  • 研究課題名:形質転換による有用飼料作物の作出
  • 課題ID:12-05-02-02-14-03
  • 予算区分:交付金(交流共同)
  • 研究期間:2002~2003年度
  • 研究担当者:高橋 亘(日本草地畜産種子協会)、高溝 正、西澤洋子(生物研)、間野吉郎、藤森雅博、佐藤広子
  • 発表論文:Takahashi et al. (2002) Plant Biotechnology 19:241-249.