多年生帰化雑草ワルナスビの侵入・拡散パターン

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要約

ワルナスビは外国からの侵入頻度が高く、農耕地・非農耕地において遺伝的に多様な集団を形成している。また、侵入・定着後、近隣の集団や圃場へ根あるいは種子によって拡散する。

  • キーワード:ワルナスビ、雑草、飼料作物、拡散、自家不和合性、草地生産管理
  • 担当:畜産草地研・飼料生産管理部・栽培生理研究室、京都大学・農学部・雑草学研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7802、電子メールshunji@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

近年、全国の飼料畑を中心に大きな被害をもたらしている外来雑草は、主に濃厚飼料の原料である輸入穀物に種子が混入することによって飼料畑に運ばれ蔓延し ていると考えられている。こうした外来雑草を効率的に防除するためには、侵入経路、定着条件、および拡散に関わる要因を詳細に解明し、それらの全過程にお いて遮断技術を開発し総合的に行う必要がある。そのため、ここでは拡散過程に注目し、根による栄養繁殖と自家不和合性を有する種子繁殖を行うワルナスビを モデル植物としてその拡散パターンを明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 調査を行った那須野が原地域全体において、原産国であるアメリカで報告されている13種類すべての自家不和合性対立遺伝子が見られたことから、比較的広域の分布は、侵入圃場からの拡散よりも新たな侵入によると考えられる。
  • 非農耕地である河川敷集団においても9種類の遺伝子が検出され、高頻度の侵入が確認されたことから、ワルナスビの侵入には農業に関わる要因以外の要因も大きいと考えられる(図1)。
  • 5mほど離れた隣接圃場間で同様な遺伝子型が発見されたことから、ワルナスビは外国からの侵入後、隣接圃場や5m程度の舗装道路によって隔てられた圃場へ容易に根で拡散する(図2)。
  • 発生圃場で生産された種子からの実生に由来すると思われる遺伝子型が検出されたことから、根による栄養繁殖だけでなく種子繁殖によっても拡散する可能性がある(図2)。
  • 以上のことから、ワルナスビは、外国から何らかの侵入経路によって高頻度に侵入し、集団形成後は、根や種子によって隣接圃場へ容易に拡散する。

成果の活用面・留意点

  • 地域全体への外来雑草の蔓延を防止する対策を立てる上で有用な知見となる。
  • この成果は、那須野が原と京都市高野川河川敷のデータに基づくものであり、より一般的な拡散実態を把握するためには、他の地域でのデータの蓄積が必要である。

具体的データ

表1.那須野が原地域のワルナスビ集団から検出された自家不和合性対立遺伝子

 

図1.高野川河川敷のワルナスビ集団の自家不和合性対立遺伝子の種類とその分布(京都市)

 

図2.隣接圃場へのワルナスビの拡散

 

その他

  • 研究課題名:繁殖様式の異なる外来雑草の拡散パターンの解明
  • 課題ID:12-06-01-*-08-03
  • 予算区分:交付金・国内留学
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:黒川俊二、今泉智通(京大)、平久保友美(岩手農セ)、吉村義則、森田聡一郎