チモシーがまの穂病菌培養液からの胞子発芽阻止物質の部分精製法

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要約

チモシーがまの穂病菌の培養濾液を、酢酸エチル及び水飽和n-ブタノールで処理し、得られた水層をSephadexG-25、中圧ローバーカラム、及びHPLCカラムを用いて分画することにより、斑点病菌の胞子発芽を阻止する活性画分が得られる。

  • キーワード:作物病害、チモシー、がまの穂病、斑点病、胞子発芽阻止、生理活性物質
  • 担当:畜産草地研・飼料生産管理部・病害制御研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7556、電子メールswan@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

チモシーがまの穂病菌(Epichloe typhina)はエンドファイトの一種で、本菌に感染したチモシーは斑点病などの病害に対して安定的に抵抗性を示す。そこで、がまの穂病菌感染により誘 導される病害抵抗性に関与する物質を明らかにし、化学薬剤によらない新規防除技術の開発に資する目的で、がまの穂病菌の培養濾液から斑点病菌の胞子発芽を 阻止する物質(胞子発芽阻止物質)を精製する方法を検討した。

成果の内容・特徴

  • 胞子発芽阻止活性は、湿室中でスライドグラス上に試料溶液(各画分の1000~10000倍希釈液)を点滴し、これに斑点病菌胞子懸濁液を加え、室温(22°C)で12時間静置後の胞子発芽率とした。
  • 培養濾液に含まれる胞子発芽阻止物質は、エーテル、酢酸エチル、及び水飽和n-ブタノールに不溶で、水溶性である。
  • Sephadex G-25濾過処理後、中圧ローバーカラム分画(LiChroprep RP-18)により、40%-メタノールの画分付近に胞子発芽阻止活性が認められ、効率よく濃縮できる(図1)。
  • 胞子発芽阻止物質は、固相抽出(BondEluteDEA)で水分通過部に活性が認められ、カルボキシル基などの負電荷を持つ官能基をもたないと推定される。
  • 加水分解処理(6M HCl、6時間加熱)後にアミノ酸のスポットは認られず、胞子発芽阻止物質はペプチドではないと推定される。
  • 遠心濾過(MicroconYM-3)で得られた濾液に活性が認められず、分子量3000以上の高分子化合物と推定される。
  • HPLCカラム(Wakosil5C8)で分画すると、3つのピークを示す混合物として活性画分が得られる(図1、図2)。

成果の活用面・留意点

  • 生物由来の新規防除資材としての本活性物質の利用、及び胞子発芽阻止機構の解明による新たな抗菌物質の開発等に応用できる。
  • 本活性物質の構造は未解明であり、今後さらにその精製と解析を進める必要がある。

具体的データ

図1.分画精製過程 図2.HPLCカラムによる分画チャートと各画分の胞子発芽阻害活性

 

その他

  • 研究課題名:誘導抵抗性の関与物質の同定と誘導抵抗性機構の解明
  • 課題ID:12-06-03-*-13-03
  • 予算区分:交付金・ISA
  • 研究期間:1999~2003年度
  • 研究担当者:御子柴義郎、吉原照彦(北海道大)、島貫忠幸、菅原幸哉、大久保博人