新たに見出された芝草3草種の病害

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要約

わが国で新たにシバに炭疽病、ベントグラスに黒点葉枯病、センチピードグラスに灰斑病の発生を確認し、前2者の病原をそれぞれColletotrichum caudatum、Gloeocercospora sorghiと同定した。

  • キーワード:作物病害、緑化植物、芝草類、新病害、同定、発生病害
  • 担当:畜産草地研・飼料生産管理部・病害制御研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7556、電子メールohiro@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

Zoysia 属等の芝草類は放牧用草地の他、侵食防止や緑化など近年益々多目的に用いられる傾向にあり、管理や草種が多岐にわたるにつれて、従来とは異なる新たな病害 の発生も危惧されている。これらの病害の発生やその生態については、他の作物と比較して詳細な検討が十分になされていないので、適切な診断と制御に資する ため調査研究を実施した。

成果の内容・特徴

  • シバ(Zoysia japonica Steud.)の新病害
    病名:炭疽病(仮称)、病原菌:Colletotrichum caudatum (Peck ex Sacc.) Peck
    1999年7月栃木県内の生産力検定圃場で発生。葉身に中央部灰色、周縁部褐色となる紡錘形の病斑を生じ、葉身先端部が侵され易い。古い病斑上に多数の黒 点(分生子層)を生じる(図1)。病斑上の分生子層には、剛毛が多数形成され、診断の目安となる。本菌は有傷接種でのみ発病が再現される。
  • ベントグラス(Agrostis stolonifera L.)の新病害
    病名:黒点葉枯病(仮称)、病原菌:Gloeocercospora sorghi Bain & Edgerton ex Deighton
    2000年6~10月に栃木県内の緑化圃場で発生。8月は病勢が治まる。症状は圃場全面に無数の褐色~銅色の小型円形枯死域を生じる。葉身上には微小な球 状の粘塊(分生子塊)を生じ、枯死部には球状の微小な菌核が表皮下に形成される(図2)。本菌は、接種でソルガムにも病原性を示す。
  • センチピードグラス(Eremochloa ophiuroides (Munro) Hack.)の新病害
    病名:灰斑病(仮称)、病原菌:2核性真菌の一種
    2002年6~10月に栃木県内の病害試験圃場で発生。病勢の進展に伴い円形の枯死域が形成され、裸地化する(図3)。葉身に中央部灰色、周縁部が明瞭な 淡褐色となる楕円形の大型病斑を生じる(図4)。本菌は、胞子などの子実体を形成しないが、無傷接種でも発病が再現される。イソプロチオラン・フルトラニ ル剤に感受性である。

成果の活用面・留意点

  • 牧草や芝草に関わる諸機関で病害の診断に有効な情報となる。
  • 新病害の病名は仮称であり、日本植物病名目録(日本植物病理学会編)に登録されて正式な病名として扱われる。

具体的データ

図1.上:シバ炭疽病の病徴下:シバ炭疽病菌の分生子スケールバーは20μm  図2.上:ベントグラス黒点葉枯病菌の分生子塊(黒矢)と菌核(白矢)スケールバーは1mm下:分生子、スケールバーは30μm 図3.センチピードグラス灰斑病による裸地化(スケールバーは15cm) 図4.センチピードグラス灰斑病の病徴

 

その他

  • 研究課題名:Zoysia 属をはじめとする芝草類の病害に関わる菌類とその発生生態の解明
  • 課題ID:12-06-03-*-03-03
  • 予算区分:小事項、交付金
  • 研究期間:1999~2003年度
  • 研究担当者:大久保博人、菅原幸哉、御子柴義郎、一谷多喜郎((財)関西グリーン研究所)