ムギダニの寄生菌Neozygites sp.の休眠覚醒と発芽条件

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要約

Neozygites sp.の休眠胞子は夏の高温によって休眠から覚醒し、覚醒後は秋以降の低温によって発芽する。また、発芽条件は寄主のムギダニの卵の孵化条件と良く一致した。

  • キーワード:イネ科牧草、虫害、ムギダニ、Neozygites sp.、休眠胞子、休眠覚醒
  • 担当:畜産草地研・飼料生産管理部・害虫管理研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7557、電子メールkkanda@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

ムギダニの有力な天敵であるNeozygites sp. はムギダニと同様に夏季を休眠して過ごす。そこで、この休眠胞子の休眠覚醒条件と発芽条件を明らかにし、ムギダニの生活史との同調性を調べる。

成果の内容・特徴

  • 実験に使用したNeozygites sp. はムギダニが死亡してから3日以内のものを用いた。
    15℃では119日おいた場合においても休眠胞子の覚醒率は3.4%に過ぎず、ほとん ど覚醒しないが、25℃では94.8%まで覚醒し、20℃では 66%が覚醒する(図1)。しか し、高温に長い時間おくとその発芽率は低下する傾向があり、25℃では68日目が、 20℃では82日目が最高の発芽率 を示す(図1)。
  • 休眠覚醒後の胞子は、18℃以下の温度では発芽したが、20℃では発芽しない(表1)。また、18℃の発芽率は15℃に比べて低い(表1)。
  • 日長条件と休眠覚醒後の胞子の発芽との間には明確な関係が認められない(表2)。
  • 休眠から覚醒したムギダニ卵は、18℃で孵化が見られたがその率は非常に低く、15℃以下で高率で孵化する(表3)。
  • 那須でムギダニが孵化する時期は10月中旬以降であるが、平均気温は9月下旬が 17.9℃、10月上旬が16.0℃、中旬14.2℃、下旬12.3℃で(4)の実験結果と一致する。
  • 以上のことから、寄生菌の休眠胞子の覚醒・発芽に係わる温度条件は、寄主のムギダニの卵の孵化条件と良く一致している。これらの条件は、栃木県那須地域の寄主と寄生菌の生活史を反映していると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 休眠胞子の人為的な覚醒をさせることができ、実験の効率化が可能である。
  • 高温に長くおきすぎると発芽率が低下する。

具体的データ

図1.Neozygites sp.休眠胞子の覚醒率に対する

 

表1.休眠覚醒後のNeozygites sp.の発芽におよぼす温度の影響 表2.日長がNeozygites sp.の休眠覚醒後の発芽におよぼす影響

 

表3.9月12日に野外採集したムギダニ卵の孵化におよぼす温度の影響

 

その他

  • 研究課題名:気候温暖化に対応した冬期発生性牧草害虫等の防除技術の開発
  • 課題ID:12-06-03-*-11-03
  • 予算区分:交付金プロ(気候温暖化)
  • 研究期間:2001~2007年度
  • 研究担当者:神田健一、柴 卓也