飼料フレーバーに対する学習を利用した嗜好性改善の可能性

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要約

フレーバー(味と匂い)を添加した飼料に対する嗜好を学習させることによって、
同じフレーバーを添加した他の飼料の嗜好性を高めることができる。しかし、匂いのみ
に対する学習では、同様の効果は得られない。

  • キーワード:フレーバー、嗜好学習、嗜好性改善、ヒツジ、飼育管理
  • 担当:畜産草地研・放牧管理部・行動管理研究室、家畜生理栄養部・生体機構研究室
  • 連絡先:電話029-838-8646、電子メールmadoka@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

嗜好性の高い濃厚飼料から得られる、揮発性成分を多く含む抽出物を添加することにより、反芻家畜の牧草や乾草に対する嗜好性を高めることができる(平成 10年度草地研究成果情報)。この効果は、濃厚飼料のフレーバー(味と匂い)が嗜好性を左右する手がかりとなっており、牧草や乾草の摂取時に濃厚飼料のフ レーバーとの類似性を認知したためと考えられる。しかし、抽出物の組成は複雑で、同じ効果を持つ物質を人工的に調製するのはむずかしい。そこで、あらかじ め人工的なフレーバーに対する嗜好を学習させることによって、このフレーバーを他の飼料の嗜好性改善に利用しうるか否かを検討する。

成果の内容・特徴

  • ヒツジに、粉砕したグラスストローに2種類の異なるフレーバーを添加して交互に給与し、給与開始時に嗜好性の低かったフレー バーの飼料の給与時にのみルーメン内にショ糖を注入する。この学習によって、ショ糖注入と組み合わせたフレーバーの飼料に対する嗜好性が高くなる(図 1-(1)の「学習飼料」)。
  • さらに、食感が異なる他の飼料に対して上記のフレーバーを添加すると、同様の嗜好(学習時にショ糖注入と組み合わせたフレー バーを好む)を示すようになる(図1-(1))。したがって、あらかじめ人工的なフレーバーを添加した飼料に対する嗜好を学習させ、そのフレーバーを添加 することで他の飼料の嗜好性を高めることは可能と考えられる。
  • 学習に用いる人工フレーバーを匂いのみに限っても、ショ糖注入と組み合わせたフレーバーの飼料に対する嗜好を学習できるが、 他の飼料に同じ匂いを添加しても同様の嗜好は認められない(図1-(2))。匂いに対する嗜好の学習のみでは、食感の異なる飼料に添加して嗜好性を高める ことは難しいと考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 濃厚飼料のフレーバーに対する高い嗜好性も、上記の1.と類似のメカニズム、すなわち「飼料摂取時に知覚したフレーバー」と 「摂取後の急激なVFA吸収量の増加」の連合学習によって形成されると考えられる(平成12年度草地研究成果情報)。したがって、濃厚飼料に人工的なフ レーバーを添加して給与することで添加フレーバーに対する嗜好を学習させ、そのフレーバーを他の飼料の嗜好性改善に利用できる可能性がある。
  • 本実験では、人為的に添加したフレーバーに対する嗜好を学習させるために、もともとフレーバー成分が少ないと考えられる飼料(グラスストロー)を使用している。飼料自体が明確なフレーバーを持つ場合には、それをマスクできる質、強度の添加フレーバーを用いる必要がある。

具体的データ

図1 フレーバーを添加した飼料に対する嗜好性の学習および学習後に同じフレーバーを添加した他の飼料の嗜好性

 

その他

  • 研究課題名:飼料フレーバーに対する嗜好性学習の般化
  • 課題ID:12-03-03-*-11-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:須藤まどか、塚田英晴、井村毅、西村宏一、兼松伸枝