北関東における放牧草地の小型哺乳動物相
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要約
北関東の放牧草地で、アカネズミ、カヤネズミ、ハタネズミ、ジネズミ、ヒミズ、ヒメネズミといった小型哺乳類が捕獲される。捕獲される小型哺乳類の種数は、草高の高い放牧地に多く、放牧強度が強く草高の低い放牧地では少ない。
- キーワード:放牧、小型哺乳類、種多様性、野生動物、草地
- 担当:畜産草地研・放牧管理部・行動管理研究室
- 連絡先:電話0287-37-7245、電子メールhtsuka@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
草地は、畜産物の生産にとどまらない多面的機能を有しており、都市住民に憩いや娯楽の場を提供していると同時に、小型哺乳類の生息地にもなっている。し
かし、草地における小型哺乳動物相を体系的に調査した事例は少なく、その草地利用との関係については十分に検討されていない。本研究では、のべ放牧頭数の
異なる放牧草地で小型哺乳類の種構成を調べ、放牧利用状況と動物相との関係を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 調査地は、栃木県北部に位置する8カ所の公共放牧草地および畜産草地研究場内の2ヶ所の放牧草地、計10カ所である。
- 放牧草地において生け捕りワナで捕獲した小型哺乳類は、アカネズミ(Apodemus
speciosus)、カヤネズミ(Micromys minutus)、ハタネズミ(Microtus
montebelli)、ジネズミ(Crocidura dsinezumi)、ヒミズ(Urotrichus talpoides)、ヒメネズミ(A.
argenteus)である(表1)。
- 放牧草地と放牧地に隣接する林地との間で捕獲される小型哺乳類の種構成を比較すると大部分(5種)が共通し、特にカヤネズミとハタネズミは放牧草地での捕獲数が多い(表1)。
- 小型哺乳類の種数は、草高100cm未満の草地で0~1種、100cm以上では1~4種が確認され(図1)、野草地や刈り取り前の兼用草地などの草高が高い草地で多くなり、面積当たりののべ放牧頭数が多い草地では少なくなる(図2)。
- 放牧草地で最も多く捕獲されるアカネズミは、春や秋と比べて夏に放牧草地での捕獲頭数が多く(表1)、草高の高い放牧草地での捕獲頭数が多い(図3)。
- 放牧草地の草高は、小型哺乳類の種数や個体数との間に密接な関係が認められ、小型哺乳類の生息条件を大きく左右する要因である。
成果の活用面・留意点
- 放牧地の生物多様性を評価する際の基礎情報となる。
- 放牧草地の小型哺乳類を保全するための草地利用についての基礎知見となる。
具体的データ
その他
- 研究課題名:放牧草地における野生哺乳動物相の調査手法の開発
- 課題ID:12-09-03-01-01-02
- 予算区分:交付金(草地動態)
- 研究期間:2001~2002年度
- 研究担当者:塚田英晴、井村 毅、須藤まどか、小迫孝実、深澤 充