水田放牧草地が周辺水田の害虫相に及ぼす影響の評価
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要約
水田放牧草地において、斑点米の原因となるカメムシ類など4目24種のイネとの共通害虫が認められるが、放牧草地周辺の水田における害虫の発生個体数は、放牧草地に近接していない水田と比較して、多くの分類群で明確な差はない。
- キーワー産草地
- ド:水田放牧、水田、害虫相、虫害、イネ科牧草
- 担当:畜産草地研・飼料生産管理部・害虫管理研究室
- 連絡先:電話0287-37-7557、電子メールtakuyas@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地
- 分類:行政・参考
背景・ねらい
水田の放牧利用は遊休水田の有効活用や荒廃防止などの目的で行われるが、周辺には稲作や野菜の栽培が行われていることが多く、これらの作物との共通害虫
の発生源となる可能性がある。本研究では、水田放牧草地やその周辺水田の主要害虫相を明らかにするとともに、放牧草地から周辺作物への害虫の侵入の有無な
どを検証し、水田の放牧利用が周辺作物へ及ぼす影響を評価する。
成果の内容・特徴
水田放牧草地
(4箇所)および水田放牧草地周辺の水田(4箇所)において、捕虫網の20回振りにより発生害虫を定期的に採集し、種類や個体数を調査した。調査は7月上
旬から8月下旬にかけて4回行った。対照として放牧草地に近接していない水田(4箇所)および採草地(4箇所)においても2~4回行った。
- 水田放牧草地において、直翅目5種、鞘翅目3種、鱗翅目2種、半翅目14種(カメムシ類8種、ヨコバイ類5種、ウンカ類1種)のイネとの共通害虫が認められた(表1)。
- 水田放牧草地周辺の水田および対照水田における害虫の発生個体数について、多くの分類群で両者に明確な差は認められなかった(図1)。
- 水田放牧草地周辺の水田における直翅目昆虫の発生個体数は、対照の水田と比較して有意に多いことが認められた(図1)が、要防除水準を上回るものではなかった。また、水田における直翅目相は、水田放牧草地のものとは大きく異なっていた(図2)。
- 水田放牧草地において、斑点米の原因となるカメムシ類の多発生は認められなかった(図3)。幼虫の発生が極端に少ないことからも、放牧草地がカメムシ類の発生源として問題となる可能性は少ないと考えられた。
成果の活用面・留意点
- 水田の放牧利用が周辺環境におよぼす影響を評価するための基礎資料となる。
- 本データは、牛の採食などによって草丈が常時10cm程度に抑えられたイネ科植物(トールフェスク、レッドトップ、ケンタッキーブルーグラス、その他雑草など)優占の水田放牧草地における調査に基づく。
具体的データ
その他
- 研究課題名:水田の放牧利用による主要害虫相の変化と周辺環境への影響評価
- 課題ID:12-06-03-*-10-03
- 予算区分:ブラニチ3系
- 研究期間:2003~2005年度
- 研究担当者:柴卓也、神田健一