空気エゼクタの原理を利用した腐食性臭気ガスの搬送装置

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要約

市販のターボファンと塩化ビニル配管材を組み合わせた簡易な臭気ガス搬送装置。空気エゼクタの原理を利用して配管の途中から腐食性の臭気ガスを吸引するので、ファンの劣化を防止できる。

  • キーワード:畜産環境、家畜ふん尿、空気エゼクタ、臭気ガス、脱臭、吸引、腐食
  • 担当:畜産草地研・畜産環境部・施設工学研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7814、電子メールabey@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

家畜排せつ物を処理する際に、土壌や木質系チップを利用して臭気を脱臭するシステムが近年普及している。しかし、臭気ガス中に硫化水素やアンモニア等の腐食性ガスが高濃度で存在する場合には、臭気ガスを搬送するファンが数ヶ月で腐食、劣化する場合があり、脱臭能力が極度に低下する。そこで、空気エゼクタの原理によってファンが腐食性の強い臭気ガスと直接接触せずに脱臭槽へ搬送できる装置を開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発した装置は空気エゼクタの原理を利用しており、配管途中に設けたノズルからの噴流で平行管との隙間を負圧にして、そこから臭気ガスを吸引する。そのためファンと腐食性臭気ガスは直接接触せず、ファンの劣化を防止できる。ファンを除く部品は市販の塩化ビニル製直管や異径ソケット等であり安価に製作できる(図1)。
  • 送風抵抗別にノズル径と平行管径の組み合わせを変化させて本装置(2.2kWのファン使用)の吸引性能を調査した結果、無負荷の場合にはメーカー提示のファン最大吐出流量とほぼ同じ13.5m3/分を吸引できる。また、土壌脱臭槽に臭気ガスを搬送する場合では4.0m3/分を吸引できる(表1)。
  • 本装置(1.5kWのファン使用)を設置した酪農家において、2年間の連続運転を行った結果、土壌脱臭槽の送風抵抗が降雨や降霜、土壌の乾燥や植生の影響などで変化するため臭気ガスの吸引量は変動するものの、全期間の平均で3.4m3/分を吸引して脱臭槽に搬送できる(図2)。
  • 前項の本装置設置事例から、イニシャルコストは約25万円であり、耐食加工された1.5kWのファン(ステンレス製で40万円以上、樹脂製で70万円以上)より安価である。また、本装置は耐食加工されたファンで直接臭気ガスを搬送する場合と消費電力はほぼ同じとなるが、脱臭槽への供給圧力が20%程度低下する(表2)。
  • インバータでファンの出力を調整した場合の吸引量データも得ており、2.2kW以下であればファンの出力別に吸引量を把握できる(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 送風抵抗を把握することで、土壌脱臭槽以外にもモミガラ、木質系チップ等を脱臭資材とする脱臭槽への臭気ガス搬送に適用できる。
  • 長期間にわたり吸引装置を運転停止する場合には、ノズルを介してファンに臭気ガスが逆流することがあるので、運転停止中にはノズルに栓をするなどの対策が必要(間欠運転の場合は対策不要)。
  • 臭気ガスをファンからの噴流で希釈しながら脱臭槽へ搬送する方式であり、希釈せずに搬送したい場合には、耐食加工された小容量のファンを導入する方が低コストになる場合がある。

具体的データ

図1 供試装置の概略図2 酪農家における吸引試験の結果

 

表1 消費電力別の供試装置の吸引量表2 吸引装置を設置した酪農家における費用 の試算例

 

 

その他

  • 研究課題名:低コスト非接触型腐食性悪臭吸引機構の実証
  • 予算区分:バイオリサイクル
  • 研究期間:2002~2004年度
  • 研究担当者:阿部佳之、福重直輝、朴 宗洙、伊藤信雄、本田善文
  • 発表論文等:阿部ら、特願2003-199832.