近赤外分析法による肉骨粉の畜種識別法

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要約

肉骨粉の畜種別由来識別は、近赤外スペクトルによる「吸収バンド吸光度比較法」、「差スペクトル法」で識別でき、近赤外分析法によるウシ由来肉骨粉の定量では高精度で迅速にしかも簡易に定量できる。

  • キーワード:近赤外分析法(NIRS)、近赤外スペクトル、肉骨粉、家畜、畜産環境
  • 担当:畜産草地研・畜産環境部・排泄物制御研究室
  • 連絡先:電話029-838-8667、電子メールamari@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:行政・普及

背景・ねらい

我が国における乳牛の牛海綿状脳症(BSE)の発生に伴い、肉骨粉は、飼料および肥料等の原料としての使用が法的に禁止されている。特に、BSEではウシ由来肉骨粉がその原因とされており、肉骨粉の畜種別識別法及び定量法は、これまで試みられた報告は少なく、迅速で簡易な手法はまだ確立されていない。そこで近赤外分析法(NIRS)により肉骨粉中のウシ由来肉骨粉を迅速に識別、定量する手法の開発を試みる。

成果の内容・特徴

  • 近赤外スペクトルを用いた吸光度の比較によるウシ由来肉骨粉の識別法
    1)吸収バンド吸光度比較法
      ウシ・ブタ・ニワトリ肉骨粉およびフェザーミールの二次微分スペクトル(微分条件;Segment 12, Gap 0)における
      1726nm, 1762nm, 2308nm, 2348nm, 2386nmの吸光度は他畜種より特徴的に大きく、2052nm, 2172nm, 2206nmの
      吸光度は他畜種より特徴的に小さく、これらの吸収バンドにおける吸光度を比較(図1)することにより畜種を識別
      できる。
    2)差スペクトル法
      ウシ・ブタ・ニワトリ肉骨粉、フェザーミール4種の平均スペクトルからの差スペクトルは、大きく波形が異なりこれら
      の比較(図2)からウシ由来肉骨粉を識別できる。
  • 検量線を用いた肉骨粉中のウシ由来肉骨粉の定量精度
    ウシ・ブタ・ニワトリ肉骨粉、フェザーミールおよびこれらの混合物にウシ由来肉骨粉をそれぞれ0.1~25%の割合で混合した試料 52 点の1100~2500nmにおける一次微分処理反射スペクトルから作成した検量線(PLS法)による推定精度は、含有率と近赤外定量値との寄与率(RSQ-V)が0.992、標準誤差(SECV)が0.722、RPD値(SD/SEP)が11.4であり、ウシ由来肉骨粉の含有率は高い精度で定量できる(図3、表1)。

成果の活用面・留意点

  • 実用場面におけるウシ由来肉骨粉の迅速識別法として利用できる。
  • 解析ソフトにより吸収バンド吸光度比較法、差スペクトル法を選択する。双方とも利用可能であれば、差スペクトル法を推奨する。
  • 検量線定量法は、肉骨粉中のウシ由来肉骨粉含有量の迅速分析法として有効である。
  • 検量線定量法では、サンプリング誤差を防止するため、試料をよく混合しスペクトルを4回測定し、その平均スペクトルを用いる。
  • 畜種別のスペクトルに大きな違いがあることから、広範な試料に適応可能である。

具体的データ

図1 . 二次微分スペクトルによる畜種別肉骨粉( 現物) の識別

 

図2.差スペクトルによる畜種別肉骨粉(現物)の識別 図3.肉骨粉中のウシ由来肉骨粉の定量精度

 

表1.近赤外分析法による肉骨粉中に含まれるウシ由来肉骨粉の分析精度

その他

  • 研究課題名:近赤外分析法を用いた飼料中の動物由来飼料原料の検出法の開発
  • 予算区分:高度化事業
  • 研究期間:2002~2004年度
  • 研究担当者:甘利雅拡、大谷文博、永西 修、田島 清、松本光人