施設園芸作物の効率的授粉にハリナシミツバチの導入・利用
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要約
飼養者を刺傷することはないハリナシミツバチ類をわが国に導入し、施設栽培作物の授粉に利用する方法を確立した。
- キーワード:ハリナシミツバチ、施設園芸、授粉、飼養技術
- 担当:畜産草地研・家畜育種繁殖部・みつばち研究室
- 連絡先:電話029-838-8626、電子メールaamano@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
熱帯・亜熱帯地域で、養蜂種として永年的にしかも安全に飼養されているハリナシミツバチ類(Meliponinae)に注目し、わが国において農業上強く要望されている施設作物のポリネーター(授粉者)として利用するための種選定およびその種の周年飼養技術の開発を目的とした。
成果の内容・特徴
- 熱帯・亜熱帯性のハリナシミツバチ類の飼養をわが国で効率よく行うために、現地にて飼養されている(すなわち家畜化の程度の高い)多くの種から、耐寒性、訪花性、分封性等多くの生態的形質を検証し、以下の2種が適していることを明らかにした(図1a, 1b)。
Scaptotorigona bipunctata(パラグアイ産) Trigona carbonaris(オーストラリア産)
- 該当ハリナシミツバチを水平分離式加温巣箱(畜草研特許)で飼養することにより周年飼養することが可能となる(図2)。
- 女王の寿命は10-15年と推測されているが、当飼養実験では導入後コロニーが波状的に成長し、安定した後女王は複数年の寿命を有することを明らかにした。従って、1つのコロニーの使用期間は複数年と期待出来る(図3)。
- 授粉効果についてはセイヨウミツバチおよびセイヨウオオマルハナバチ同等の能力があると判断される(図4)。
- ミツバチ類と同様、訪花活動の定位には特定の波長(385nm)の存在に依存していると観察された。紫外線除去のフィルムをコーティングしている施設では、導入初期にコロニーの損耗が起こり得るが、これを防ぐには385nmの波長を放射する紫外線灯を設置することが効果的である。
成果の活用面・留意点
- 本研究では、海外の研究機関との協力により10余種のハリナシミツバチ種を合法的に導入しているが、産業的に実利用を目指すには新たな合法的導入方法を考えねばならない。
- この2種のハリナシミツバチ種は10°C以下の状態が数日続くとコロニーは崩壊へと向かうため、万が一野外逃亡してもわが国の自然環境下では定着することはない。さらに、分封女王は処女王であるため野生オス蜂がいないわが国ではコロニーの定着の恐れは少ない。
- コロニーの更新(女王の世代交代)は水平分離式加温巣箱の操作により可能であるが、女王の交尾飛行環境を整えるには、多コロニーの同所飼養を行い得る設備が必要である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:高次真社会性昆虫の有用授粉形質の特定及び利用技術の開発
- 予算区分:ジーンバンク
- 研究期間:2001~2004年度
- 研究担当者:天野和宏、木村 澄、森本信生
- 発表論文等:1) 天野(2001)畜産研究成果情報15:19-20.
2) 天野(2002)農業技術57:1-7.
3) Amano (2002) FFTC Newsletter 138:2-3.
4) 天野(2005)東北昆虫38:5-7.