乳生産に関するメカニスティック・モデルの適合性
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要約
現在、広く用いられているメカニスティック・モデルのうち、米国のNRCモデル(2001 乳牛)は代謝蛋白質が制限要因でかつルーメン内窒素バランスが負の時には乳生産量を過小評価する。コーネル・モデル(CNCPS 2003)にはその傾向はみられない。
- キーワード:家畜栄養、乳用牛、メカニスティック・モデル、NRC、コーネル・モデル
- 担当:畜産草地研・家畜生理栄養部・消化管微生物研究室
- 連絡先:電話029-838-8660、電子メールkajikawa@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
米NRCモデル1 やコーネル・モデル2 等、家畜の反応を要因毎に解析してそれを論理的に構築したメカニスティック・モデル(機械論的モデル)を利用した家畜生産の推定・評価が広まってきている。しかしこれらのモデルの正確性や精密度を実際に検証した試験研究は、少なくとも我が国では行われていない。そこで実際の乳牛の泌乳試験成績を用いて、これらのモデルの当てはまり具合を検討し、それらの利用における問題点を抽出する。
- National Research Council. 2001. Nutrient Requirements of Dairy Cattle, 7th rev. ed. National Academy Press, Washington, D.C.
- Fox DG, et al. 2003. The Net Carbohydrate and Protein System for Evaluating Herd Nutrition and Nutrient Excretion. Model Documentation. Animal Science Mimeo 213. Cornell Univ., Ithaca, NY.(ソフト、マニュアルとも、http://cncps.cornell.edu/downloads.html からダウンロード可能)
成果の内容・特徴
- 日乳量40kg前後の乳生産の推定において、代謝エネルギー(ME)が制限要因となる場合は、米NRCモデルとコーネル・モデルは、ともに生産量を正確に推定する(表1の飼料A、BおよびC)。
- 代謝蛋白質(MP)が制限要因となり、かつルーメン内窒素代謝が負となる条件では、米NRCモデルは乳生産を過小評価する(表1の飼料D、EおよびF)。コーネル・モデルでは、その傾向は示されない。
- 米NRCモデルではルーメン細菌由来の代謝蛋白質を低く見積もる傾向がみられるが、これはルーメン内で利用可能な窒素源が不足することによる(表2の細菌MP)。
- 米NRCモデルにおけるルーメン内可溶性および分解性蛋白質の過小評価は、リサイクル窒素が新版から考慮されなくなったことが原因のひとつと考えられる。新版では内因性窒素がモデルに新たに加えられたものの、量的にはリサイクル窒素除去分を補填していない(表2のΔRMとΔEM)。
成果の活用面・留意点
- メカニスティック・モデルの構築は、まだ試行錯誤の段階であり、実際に用いる場合には、複数のモデルを併用することが望まれる。
- 解析には、平成12年~14年関東東海北陸畜産関係8場所協定で行われた飼養試験のデータを用いた。
具体的データ


その他
- 研究課題名:動物質飼料に依存しない高泌乳牛の飼養管理技術の確立
- 予算区分:高度化事業
- 研究期間:2004~2006年度
- 研究担当者:梶川 博、古賀照章・浅井貴之(長野畜試)、石崎重信・渡邊晴生(千葉畜研セ)、
篠原 晃・都丸友久(群馬畜試)、阿久津和弘・水戸部晃治(栃木酪試)、佐藤 精(愛知農総試)、
田村哲生(東京畜試)、清水景子・横山紅子(山梨酪試)、関 誠(新潟農総研)
- 発表論文等:1) Kajikawa et al. (2004) J. Dairy Sci., 87, Suppl. 1:346.
2) 梶川 (2004) 畜産の研究 58:653-660, 760-766, 872-882, 993-998, 1105-1110.