無線草刈機の多目的利用による急傾斜草地の管理作業
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
15 ゚から30 ゚程度の急傾斜地を抱える公共牧場等の起伏に富んだ牧草地において、掃除刈りや施肥が可能な非乗車型の無線草刈機を用いると、作業者は50~100m離れた所からも無線で作業機を操作でき、安全、快適、高能率な管理作業ができる。
- キーワード:放牧、作業、草刈機、無線操作、急傾斜地、公共牧場
- 担当:畜産草地研・飼料生産管理部・栽培工学研究室
- 連絡先:電話0287-37-7801、電子メールsawa@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地、共通基盤・作業技術
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
急傾斜地をかかえる放牧地では、管理人の高齢化や機械化の遅れにより、危険、きついなど労働負担感が大きく、日々の管理では当初の造成面積を維持することが困難になってきている。特に、20 ゚以上の急傾斜地を有する放牧地では適度な放牧圧により管理することが重要である。しかし、放牧圧が得られない場合は、掃除刈りや施肥等の管理作業を行う必要があるが、安全で高能率な作業方法がないのが現状であった。このような条件下で安全、快適、高能率な管理作業を提供することをねらいとする。
成果の内容・特徴
- ベース機は、堤防や河川敷等の草刈りのために市販されている無線草刈機であり、エンジンと走行部を有する非乗用型の本機部分は、全長約4.4m、全幅約2.1m、全高約1.3mで機関出力49kW(67PS)、質量2680kgである(表1)。トラクタに比べて、専用機で低床であるために転倒に対して強い。また、走行部はクローラ型で無段変速の油圧駆動である。
- 本機の市販機と異なる部分は、牧草地の起伏に作業機と本機の傾きを独立で対応させるための取付けヒッチ、施肥機のための油圧回路と無線回路の増設であり、作業機は油圧駆動で、フレールモーア以外にディスクモーア、播種機、施肥機がある(図1)。
- 施肥作業では30 ゚の傾斜を等高線方向に作業できないが、登降坂方向には作業できる。20m幅での施肥作業能率は2.99ha/hである(表2)。
- フレールモーアによる掃除刈りは、条件が良ければ30 ゚以下の傾斜地、土留めの土手の部分など、条件がよければ牧区内(作業不可:倒木のある部分)を刈取りできる。作業能率は0.28ha/hである(図2、表2)。
- 無線操作は視認や障害物がないなど条件が良ければ50~100m離れていても作業可能であり、傾斜面を見渡せる傾斜面に座った状態で作業を行うこともでき(図2)、乗用型の作業機に比べて騒音、振動を回避できるので、長時間作業もできる。なお、電波が届かない状態になると、自動的に走行を停止する。
成果の活用面・留意点
- 急傾斜地を有する公共牧場の牧区の掃除刈りや施肥作業に利用できる。
- 施肥作業は、土留め、ガリ浸食などがあると旋回場所など予め経路を考える必要がある。
- 秋田県内の公共牧場(1牧区5~7ha、ガリ浸食・露岩なし)で行った成果であり、ガリ浸食、露岩の多い所、灌木や落木の多い牧区での作業は、機械導入前に調査が必要である。
具体的データ


その他
- 研究課題名:トラクタの作業支援技術の開発
- 予算区分:交付金(所特定)
- 研究期間:2002~2005年度
- 研究担当者:澤村 篤、住田憲俊
- 発表論文等:澤村(2004)畜産技術589号:16-18.