ブタ子宮内膜にエストロジェンレセプターαとβが存在する
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要約
ブタ子宮内膜の免疫組織化学的染色により、ERαは発情期の内膜上皮細胞直下の粘膜固有層に強く局在する。一方、ERβは内膜上皮および腺上皮細胞に強く局在するが、粘膜固有層には局在を認めない。またRT-PCRにより、子宮内膜におけるERαおよびERβの遺伝子発現が確認され、免疫組織化学的染色の結果と一致する。
- キーワード:ブタ、子宮内膜、ERα、ERβ、発情周期、家畜繁殖
- 担当:畜産草地研・家畜育種繁殖部・上席研究官(家畜繁殖担当)
- 連絡先:電話029-838-8632、電子メールaokano@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
多くの動物種でエストロジェンレセプター(ER)にはα、β型 があり、両者はホルモンやエストロジェン様の作用を持つ内分泌かく乱物質(EDC)等のリガンドに対する親和性に差異があると報告されている。しかし、ブタ子宮内膜でのERα、ERβについては、それらが存在するか否かも不明である。雌ブタの生殖機能と密接に関わるエストロジェンとエストロジェン様EDCは、ERαおよびERβと結合してその作用を発揮する。それらの作用機序を解明するには、ERαおよびERβの子宮内膜組織における局在についての情報が不可欠である。
成果の内容・特徴
- 発情周期(E) の4、8、12、15、20日目のブタ子宮内膜組織の凍結切片に対する、ABC法での免疫組織化学的染色により、ERαはE4の内膜上皮細胞直下で部分的な局在を示す(図1A、B)。E8、12、15と発情周期が進むのに伴い弱い局在となる(図1C、D、E)。発情期(E20)の内膜上皮細胞直下の粘膜固有層に強い局在が認められる。内膜上皮細胞では、弱い局在しか認められず、腺上皮細胞には局在を認めない(図1F、G)。
- ERβは、E4の内膜上皮細胞で局在を示すが(図2A、B)、E8、12、15と発情周期が進むのに伴い弱い局在となる。腺上皮細胞でも局在を認める(図2C、D、E)。E20の内膜上皮および腺上皮細胞に強い局在が認めるが、粘膜固有層では局在を認めない(図2F、G)。
- RT-PCRにより子宮内膜(E4、8)において、ERαおよびERβの遺伝子発現が確認され、免疫組織化学的染色の結果と一致する(図3)。
成果の活用面・留意点
- ブタ子宮内膜におけるERαおよびERβの存在の確認は、エストロジェンと子宮内膜機能との関連、またエストロジェン様EDCの作用をより詳細に解明するための基礎的知見として利用しうる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:家畜生殖器におけるステロイドホルモンおよび内分泌かく乱物質の作用競合の解明
- 予算区分:環境研究(環境ホルモン)
- 研究期間:1999~2002年度
- 研究担当者:岡野 彰