消化管ホルモングレリンは泌乳牛の成長ホルモン分泌を高める

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要約

乳牛では、消化管ホルモンであるグレリンの血中濃度は泌乳前期に上昇し、成長ホルモン(GH)分泌促進作用も増大する。グレリンは泌乳調節のためのGH分泌に重要な役割を果たす。

  • キーワード:グレリン、成長ホルモン、泌乳、乳用牛、家畜生理
  • 担当:畜産草地研・家畜生理栄養部・代謝内分泌研究室
  • 連絡先:電話029-838-8645、電子メールitoh@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

成長ホルモン(GH)は乳牛の成長や泌乳を制御する主要なホルモンである。GHの分泌は脳内の視床下部から分泌されるGH放出ホルモン(GHRH)とソマトスタチンによって調節されていると考えられていたが、1999年12月にラットにおいてこれとは別の、消化管から分泌される新規のGH分泌調節ホルモングレリンの存在が明らかになった。GHの分泌は幼若期に活発で、その後次第に低下し、泌乳の開始とともに再び上昇するが、そのメカニズムについては未だ不明な点が多い。
そこで、これまで知られていたGHRHと新規ホルモングレリンのGH分泌促進作用、およびグレリンの分泌動態について、成長と泌乳にともなう変化を調べた。

成果の内容・特徴

  • グレリンは、哺乳子牛、育成牛、泌乳前期牛、泌乳中後期牛、乾乳牛すべての生理段階の乳牛においてGH分泌を促進する。GH分泌作用は、ホルモンの量が同じであればGHRHの方がグレリンよりも大きいが、子牛に比べて泌乳前期にはグレリンのGH分泌促進作用は増大する(図1)。
  • 血中のグレリン濃度は泌乳前期に最も高く、乳期の進行にともなって低下する(図2)。血中のGH濃度は哺乳期に最も高く、育成期には低下するが、泌乳前期に再び上昇する。
  • 成長期のGH分泌は主にGHRHによって調節され、成牛ではこの反応は低下するが、グレリンは泌乳の開始とともに活性化するGH分泌に大きな影響を及ぼしている。

成果の活用面・留意点

  • グレリンが主要な泌乳調節ホルモンであるGHの泌乳期における分泌を調節することが明らかになり、内分泌機能を利用した新規の増乳技術や育種指標の開発のための基礎的知見として活用できる。
  • グレリンの作用を効果的に発揮させるため、給与する飼料組成(粗飼料多給と濃厚飼料多給の違い)や環境温度の影響をさらに検討する必要がある。

具体的データ

図1.成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)による効果と比較したGH分泌を促すグレリンの効果

 

図2.乳牛の生理ステージによる血中グレリンとGH濃度の相違

その他

  • 研究課題名:ソマトトロピン・IGF-I軸の泌乳制御機構の特性を利用した増乳技術の開発
  • 予算区分:交付金、形態生理
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:伊藤文彰、小松篤司、櫛引史郎、甫立孝一(北里大学獣医畜産学部)、米内美晴(家畜改良センター)
  • 発表論文等:1) Itoh et al. (2005) Domestic Animal Endocrinology 28:34-45.
                      2) 伊藤 (2005) デーリィマン 2月号 76-77.