六フッ化イオウを用いて測定した反すう家畜からのメタン発生量の精度と代謝エネルギー摂取量算出への利用

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要約

六フッ化イオウをトレーサーとして利用して測定した反すう家畜からのメタン発生量は、開放型呼吸試験装置により測定した値と有意差がなく、代謝エネルギー摂取量測定にも十分利用できる。

  • キーワード:ウシ、ヒツジ、ヤギ、メタン、地球温暖化、代謝エネルギー、家畜栄養
  • 担当:畜産草地研・家畜生理栄養部・反すう家畜代謝研究室
  • 連絡先:電話029-838-8655、電子メールkurihara@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

反すう家畜から発生するメタンは、温室効果ガスであると同時に、摂取した飼料エネルギーの損失であり、その正確な測定と低減技術の開発が多くの国で求められている。そのため、近年、六フッ化イオウ(以下、SF6)をトレーサーとして利用して、メタン発生量を比較的簡易に測定する技術(以下、SF6トレーサー法)が提案されている。そこで、SF6トレーサー法と開放型呼吸試験装置(以下、呼吸試験法)により反すう家畜からのメタン発生量を測定し、測定精度について検討する。また、総エネルギー摂取量、糞尿へのエネルギー排泄量および両測定手法で求めたメタン発生量を用いて、家畜の代謝エネルギー(以下、ME)摂取量を求め、比較検討する。

成果の内容・特徴

  • SF6トレーサー法は、SF6を定量的に放出するカプセルを家畜に投与し、呼気中に含まれるSF6とメタン(CH4)の濃度を測定することによって、以下の式によりメタン発生量を算出する方法である。
    CH4発生量(g/日)=SF6放出速度(g/日)×[CH4(μg/m3)/SF6(μg/m3)]
  • 同一処理に育成牛または乾乳牛を4頭供試し、1日単位で2~4日間にわたってメタン発生量を測定し、供試牛のメタン発生量について比較した結果、SF6トレーサー法によるメタン発生量は呼吸試験法による測定値の84~121%(平均99%)であり、両測定値間に有意差はない(p>0.1;表1)。
  • 同時に、総エネルギー摂取量および糞尿へのエネルギー排泄量を測定し、供試牛のME摂取量を求めたところ、SF6トレーサー法によるメタンエネルギー損失量を用いたME摂取量は呼吸試験法の96~102%(平均100%)である(表2)。
    以上のことから、SF6トレーサー法によるメタン発生量の測定値は、呼吸試験法による値と有意差がなく、代謝エネルギー摂取量測定にも十分利用できる。

成果の活用面・留意点

  • SF6トレーサー法は、一般畜舎に繋留中あるいは放牧中の家畜にも適用できる。
  • ハーネス、糞筒および尿導ホースを利用した全糞尿採取法と組み合わせることにより、一般畜舎に繋留中の反すう家畜の代謝エネルギー摂取量が測定可能となる。
  • 1回のカプセル投与により、連続1年程度の測定が可能であるが、それ以降はSF6の放出速度が一定でなくなるために、測定できなくなる。また、第一胃フィステル装着反すう家畜以外からのカプセル回収は不可能である。

具体的データ

表1.呼吸試験法とSF6トレーサー法により測定したウシからのメタン発生量

 

表2.呼吸試験法またはSF6トレーサー法により測定したメタン発生量を用いて算出し たウシの代謝エネルギー摂取量

その他

  • 研究課題名:「家畜及び家畜糞尿処理過程に由来するCH4、N2O排出量推定の精緻化および
                      排出抑制中核技術の汎用化と普及に関する研究」、
                      「アジア諸国において有効な反すう家畜由来CH4発生制御技術の開発と
                      ソースデータベースの構築および削減効果の評価」
  • 予算区分:環境総合
  • 研究期間:2000~2002年度、2003~2007年度
  • 研究担当者:栗原光規、寺田文典、田鎖直澄、野中最子、樋口浩二、永西 修
  • 発表論文等:1) 寺田 (2002) 農林水産技術会議事務局 研究成果 404:63-65.
                      2) 栗原 (2003) 農林水産技術会議事務局 海外調査資料 38:3-26.