牛脂不鹸化画分はマウスにおける脂質嗜好性を増強する
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要約
牛脂より、その微量成分に相当する不鹸化画分を調製し、純粋なトリアシルグリセロールに混合すると、マウスにおける嗜好性が増強される。
- キーワード:肉用牛、畜産物、脂質、不鹸化画分、嗜好性、畜産物・品質
- 担当:畜産草地研・品質開発部・畜産物品質評価研究室
- 連絡先:電話029-838-8690、電子メールksuk@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
食肉の「おいしさ」に及ぼす脂肪の影響は、これまで主としてやわらかさへの寄与と口溶けのよさ、および香気で説明がなされてきた。一方、近年、舌における脂肪酸受容体の発見など、脂肪の嗜好性についてその知見を見直す必要性が出てきた。
また、脂肪に含まれる微量成分は、肉の嗜好性に何らかの影響があると想定されてきたものの、その詳細については明らかにされていなかった。
本研究では、食肉中の脂質の微量成分に関するモデルとして、牛脂の不鹸化画分(トリアシルグリセロール以外の成分)を用い、これがマウスにおける純粋なトリアシルグリセロールの嗜好性にどのような影響を及ぼすかを明らかにする。
成果の内容・特徴
- 市販の国産牛由来牛脂より、表1の方法で、牛脂微量成分の遊離脂肪酸とコレステロールを主成分とする不鹸化画分を得る(図1は組成をあらわすクロマトグラムで、検出波長である206nmは文献による)。
- 純粋なトリアシルグリセロールとしてトリオレインだけを含む寒天ゲルと、さらに不鹸化画分を含む寒天ゲルを、実験前4時間絶食絶水させたマウスに対して同時に呈示し、2時間自由に選択摂食させ、摂食量を比較する(図2は実験方法の概要)。
- 寒天ゲル1gあたり、不鹸化画分を0.01および0.1mg添加することで、純粋なトリオレインのみを含む寒天と比較してマウスは好んで摂食するようになる(図3(a))。
- トリアシルグリセロールを含まないただの寒天ゲルでは、不鹸化物を添加してもマウスにおける摂食量は変わらず、嗜好性を示さない(図3(b))。
- 以上の結果より、牛脂の不鹸化画分はトリアシルグリセロールの嗜好性を増強するが、不鹸化画分だけでは嗜好性を示さないことがわかる。
成果の活用面・留意点
- 本成果は、脂肪中の微量成分が嗜好性に与える影響に関する参考資料となる。
- 有効成分については別途同定作業が必要となる。
- 本成果は4時間の絶食絶水を行ったマウスにおける限定された条件下での知見である。また、実験期間以外に給与している飼料は長期飼育用飼料(代謝エネルギー3.78kcal/g, 粗タンパク質17.7%, 粗脂肪4.4%)であり、脂質欠乏状態ではない。
- 本成果はマウスにおける知見であり、ヒトにおける適用については別途検討が必要である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:食肉品質の評価手法に関する調理科学的および感覚生理学的検討
- 予算区分:交付金・小事項(飼料安全性)
- 研究期間:2002~2004年度
- 研究担当者:佐々木 啓介、三津本 充
- 発表論文等:Sasaki and Mitsumoto (2004) Physiology & Behavior 81(4): 665-670.