資源循環型酪農モデルにおけるダイオキシン類の動態

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要約

資源循環型酪農モデルにおける搾乳牛と飼料生産圃場を巡るダイオキシン類の動態を平成11年と平成15年で比較したところ、乳牛の全給与飼料からの摂取量、その内自給飼料からの摂取量、牛乳への移行量、ふん尿排出量の全てにおいて大幅に減少していた。

  • キーワード:乳用牛、飼料作物、サイレージ、家畜ふん尿、ダイオキシン類
  • 担当:畜産草地研・家畜生産管理部・資源循環研究チーム
  • 連絡先:電話0287-37-7004、電子メールyamada@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

現在、家畜ふん尿を有効利用して自給粗飼料を作り自給率を高める資源循環型酪農が、畜産環境ばかりではなく畜産物の安全・安心の確保の面からも強く求められている。
しかし、資源として有用な物質を循環利用する際には、同時に有害物質の挙動・動態も明らかにしておく必要がある。そこで、代表的な有害化学物質であるダイオキシン類について、資源循環型酪農での動態を明らかにし、有害化学物質のより一層の低減化に向けた技術開発に資する。

成果の内容・特徴

  • モデル牛舎において生産された牛乳中のダイオキシン類濃度は、生乳当たりで平成15年0.027pg-TEQ/gであり、市販牛乳での農水省実態調査0.021pg-TEQ/gと同等であり、平成11年の1/4の水準にまで低下した(図1)。
  • 給与した混合飼料(TMR)並びにその主要な原料である自給粗飼料(サイレージ)中の濃度は1/8に低下した。この時、排泄されたふん尿中濃度も飼料と同様に平成11年の約1/8であった(図1)。一方、堆肥中濃度は戻し堆肥としての使用やおが屑からの持ち込みの影響により、約1/2の減少に留まった(図1)。
  • 図2と図3に、これらの値を基に算出した平成11年と平成15年の資源循環型酪農モデル牛舎と専用圃場を巡るダイオキシン類の流れを単位面積(ha)当たりで示した。資源循環型酪農モデル系内に平成11年には購入飼料とおが屑として10.449μg-TEQ/haのダイオキシン類が持ち込まれ、牛乳として2.879μg-TEQ/haが持ち出され、堆肥・スラリーとして5.836μg-TEQ/haが圃場へ施用された。平成15年には同様に1.875μg-TEQ/haが持ち込まれ、0.777μg-TEQ/haが持ち出され、0.714μg-TEQ/haが圃場施用された(図2,図3)。
  • 牛乳としての系外への移出量は、平成15年には対平成11年で27.0%に減少した。自給粗飼料からの持ち込み量は大気中の濃度の減少と平行して平成15年には対平成11年で13.8%と大きく減った。また、購入飼料中濃度も同時に16.5%にまで減少した。飼料全体に対する自給飼料と購入飼料の寄与割合は、平成11年及び平成15年ともに概ね50%で変わらなかった(図2,図3)。
  • 外部からのダイオキシン類の持ち込みが減少するに伴って、ふん尿中への排出量も9.2%にまで減少し、結果として堆肥やスラリーとしての圃場への施用量が対平成11年で12.2%と大きく減った(図2,図3)。

成果の活用面・留意点

  • 自給飼料を活用した酪農経営におけるダイオキシン類動態の基礎的知見として活用できる。
  • 生産現場での結果なので、平成11年と平成15年では飼料構造や経産牛頭数は若干異なる。

具体的データ

図1.畜草研モデル牛舎におけるダイオキシン類濃度

 

図2.畜草研モデル牛舎を巡るダイオキシン類の流れ

 

図3.畜草研モデル牛舎を巡るダイオキシン類の流れ

その他

  • 研究課題名:資源循環型酪農における内分泌かく乱物質動態の解明
  • 予算区分:有害化学物質
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:山田明央、小林良次、野中和久、張 建国、青木康治