画像処理による飼料イネ籾中の破砕籾の識別

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要約

色判別及び形状解析を用いた画像処理によって、飼料イネサイレージ中の籾が破砕か非破砕かを客観的に判定できる。

  • キーワード:飼料利用、飼料イネ、サイレージ、籾、破砕、画像処理、Java
  • 担当:畜産草地研・家畜生産管理部・調製工学研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7803、電子メールkazuto@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地、共通基盤・作業技術
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

稲発酵粗飼料(イネWCS)の乳肉牛への給与においては、未消化籾が多いことが課題となっている。籾の消化性を高める方法として、消化されにくい籾殻に物理的に損傷を与える等の前処理を行うことにより、籾殻中の玄米に消化液が接触できるようにして未消化籾を低減させる試みが行われている。しかし、その効果については簡便に測定する手法がないため、給与実験に頼っているのが現状であり、多くの手間と時間がかかる。イネWCSの籾が消化可能かどうかについて客観的に識別できる方法が必要である。
そこで,籾が破砕または籾殻が一部でも剥離しているか,或いは全く剥離していない非破砕籾であるかを画像処理によって識別できるようにし,飼料イネサイレージの消化性向上装置の開発や飼料イネ籾の消化性の給与前判定に用いる。

成果の内容・特徴

  • 画像の取得に当たっては、籾を平板上に互いに重ならないように置き、1粒当たりの解像度120×60pixel程度、8ビット/チャンネルのRGB画像としてCCDカメラとキャプチャボード又はデジタルカメラ等によって取得され、画像処理に用いる。本情報では、品種として「はまさり」を使用した例を示す。
  • 画像処理プログラムはJavaで記述され、Java 2 SDKで開発されているため、Java仮想マシンの動作する環境で実行可能である。
  • 判別処理は、まず個々の籾に対しラベリングと個々の籾画像に分割して背景が黒で置換される。次に、ハレーションの影響で周囲が白線のように撮影されてしまう場合があるため、マスク画像との論理積によって外周部が一律に除去される。この後、白色部とそれ以外の二値化により、色による判定画像が得られる(図1)。さらに、非破砕と判定されたものに対し色判別だけでは誤判定の可能性があるため、形状解析処理がなされる。これには、輪郭抽出を行いr-θ-φ座標系(輪郭画像の重心から輪郭上の点へのベクトルの角度θと、点を通る接線とベクトルとのなす角φとによる座標系、図2)に基づく形状解析処理を行ってθとφとの関係が得られ、識別値φctのしきい値を10程度とすることによって非破砕籾か破砕籾かを判別できる(図3)。
  • 以上色だけでは90%程度であった判別精度は、形状解析を加えることによって破砕籾と非破砕籾とをほぼ完全に識別できる(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 試料中にイナワラ等が混じっている場合は、画像取得前に取り除いておく必要がある。
  • 画像の撮影方向の裏側だけしか籾殻が剥離しておらず、撮影方向から見た外形が正常であれば誤判定するが、そのような場合はまれである。

具体的データ

図1 色判別処理

 

図2 形状判別処理

 

図3 形状判別による識別 図4 非破砕籾と破砕籾の判別精度

その他

  • 研究課題名:イネWCSの未消化籾低減調製技術の開発 
  • 予算区分:ブラニチ3系
  • 研究期間:2003~2004年度
  • 研究担当者:重田一人、元永佳孝(新潟大)、喜田環樹、松尾守展